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【識者の眼】「アレルギー診療にオンラインは導入可能か?」楠 隆

No.5058 (2021年04月03日発行) P.62

楠 隆 (龍谷大学農学部食品栄養学科小児保健栄養学研究室教授、滋賀県立小児保健医療センター小児科非常勤医師)

登録日: 2021-03-15

最終更新日: 2021-03-15

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新型コロナウイルス感染症の流行によって患者の受診控えが起こり、なかでも小児科は深刻な影響を受けています。小児科診療の中でも大きな比重を占めるのがアレルギー診療、とりわけ食物アレルギーの診療です。最近ではいたずらに除去を続けるのではなく、安全に摂取できる最小量から始めて少しずつ増量していくことで段階的に解除していく方法が行われるようになっています。また、発症リスクのある乳児に対して可能性のあるアレルゲン食品摂取を早期から開始することで、食物アレルギー発症を抑える一次予防の有効性も指摘されるようになってきました。このような「食べさせるアプローチ」は一方で症状誘発のリスクを伴うため、少なくとも開始時点では医療機関で食物経口負荷試験として実施する必要があると考えますが、コロナ禍による受診控えが起こると摂取の開始や増量負荷が出来なくなります。

そこで今、注目されているのがオンライン診療です。あくまで低リスクの症例に限ってですが、患者家族と医師がオンラインでつながり、バーチャルな環境で食物経口負荷試験を行う試みが北米のグループから提案されています1)。医療機関への通院が難しい家庭にとってオンライン診療のメリットは大きく、コロナ収束後も一定のニーズがあると思われます。Nature誌のアンケートによると、コロナ禍で多くの学会がWeb開催となりましたが、実はコロナ収束後もWeb形式の学会を存続させてほしいと多くの研究者が望んでいるそうです2)。同様にオンラインによる食物アレルギー診療もコロナ禍をきっかけにその利便性・安全性が評価されれば、いずれ普通の診療の一形態になるかもしれません。日本では今のところそこまでの動きはなく、また個人的にはリスクを伴う負荷試験をオンラインで行うことにはまだ抵抗があります。しかしながら、患者家族の利便性向上のために、まずは検査結果の説明、治療方針の相談、安定している症例の定期投薬、などリスクの少ない内容からオンライン診療を積極的に検討する時期に来ているのかもしれません。

【文献】

1)Mack DP ,et al:J Allergy Clin Immunol Pract. 2020;8:2851-7.

2)Remmel A:Nature. 2021; 591:185-6.

楠 隆(龍谷大学農学部食品栄養学科小児保健栄養学研究室教授、滋賀県立小児保健医療センター小児科非常勤医師)[食物アレルギー][コロナ禍]

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