No.5061 (2021年04月24日発行) P.65
柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)
登録日: 2021-04-02
最終更新日: 2021-04-02
2021年2月24日に9価のヒトパピローマウイルス(human papillomavirus:HPV)ワクチン(シルガードⓇ9)が発売されました。HPVは性行為で男女ともに感染し、持続感染により子宮頸癌、肛門癌、咽頭癌、尖圭コンジローマを起こします。日本では2013年にHPVワクチンの定期接種が開始され、12〜16歳の女性(小学校6年から高校1年生)は2価・4価のワクチンが無料で接種できます。HPVは約200種類のタイプがあり、ワクチンの価が大きいほど、予防効果が高くなります。9価のワクチンでは、9種類のタイプのHPV感染を予防し、効能には「子宮頸癌とその前駆病変、外陰部癌、腟癌、尖圭コンジローマの予防」があります。
9歳以上の女性が対象だが、定期接種の対象になっておらず任意接種となる。
自費のため施設によって値段が異なるが1回3〜4万円前後のところが多い(3回接種が必要)。
4価のワクチンの効果に加えてHPV 31/33/45/52/58が原因の子宮頸癌、外陰・腟癌を97%減少させるため、若年時の接種で子宮頸癌全体を90%以上予防できると考えられている(4価の予防率は88%)1)。
4価のガーダシルⓇと比較して注射部位の副反応(疼痛等)がやや多い(90.7% vs 84.9%)が、ギラン・バレー症候群や急性散在性脳脊髄炎(ADEM)などの重篤な症状が増加したという報告はない。
被接種者の全例登録が必要なため、接種する医師は事前にe-learningと医師登録が必要。被接種者にも携帯から専用アプリをダウンロードして個人登録してもらう必要がある。
アメリカでは2014年から11〜12歳の男女に9価ワクチンの2回接種が推奨されています。2021年3月29日に日本産科婦人科学会では①9価HPVワクチンの定期接種化、②接種できなかった方への無料接種枠の拡大、③3回接種から2回接種への変更、④男性への接種推奨等を厚生労働省に要望しています2)。HPVワクチン接種率が1%以下の日本では、ワクチンの情報提供とともに接種を希望する人が気兼ねなく接種できる体制づくりが必要です。
【文献】
1)日本産科婦人科学会:浸潤子宮頸がんの減少効果や9価HPV ワクチンについて
[http://www.jsog.or.jp/uploads/files/jsogpolicy/HPV_Part3.pdf]
2)日本産科婦人科学会:HPVワクチンに関する要望書.2021年3月29日
[http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210329_HPVyoubousho.pdf]
柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[予防接種]