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【識者の眼】「コロナ禍で誇れる日本のセーフティーネット(2)─医薬品の健康被害救済制度」藤原康弘

No.5064 (2021年05月15日発行) P.58

藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)

登録日: 2021-04-22

最終更新日: 2021-04-22

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コロナ禍でも誇れる我が国の持つ良い仕組みとして、ワクチン接種や医薬品の適正な投与下で、不幸にして発生してしまった健康被害に対して用意されている救済制度が主に2つある。このうち前回は「予防接種健康被害救済制度」を紹介した。今回は「医薬品副作用被害救済制度」を紹介する。

新型コロナウイルス感染症治療薬として承認されているレムデシビル(ベクルリー)の副作用によって一定限度を超える健康被害(入院治療、生活に支障を来す程度の障害等)を受けた方に対しては、死亡の場合、生計維持者であれば、遺族年金が245万7600円(年額)10年間、生計維持者でなければ、遺族一時金が737万2800円、給付される。また、18歳以上の成人において、常に介護が必要になるような1級の障害が生じた場合には障害年金280万9200円(年額)が支給されるが、在宅介護の場合の介護加算は支給されない。そして、治療に使った医療費(自己負担分)と入院や通院(予防接種の場合と異なり入院相当に限定)などに使った諸費用として医療手当(定額)の支給もある。

医薬品の救済制度の請求窓口はPMDAで、厚労省の薬事・食品衛生審議会副作用・感染等被害判定部会での審議・判定を経て給付が決定される。財源は、許可医薬品製造業者等(製薬企業など)からの拠出金で賄われてる。全世界で医薬品の副作用被害もカバーされる医療事故補償や保険の仕組みを有している国・地域は、日本と同様の制度を有する台湾の他、フランス、ドイツ、スウェーデンなど10に満たない。

診療にあたる医師は、これら2つの救済制度の存在を是非知っておいてもらいたい。

藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)[薬事]

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