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【識者の眼】「コロナ禍の医療従事者のメンタルヘルス」平川淳一

No.5064 (2021年05月15日発行) P.57

平川淳一 (平川病院院長、東京精神科病院協会会長)

登録日: 2021-04-26

最終更新日: 2021-04-26

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コロナ患者に直接対応している医療スタッフの実数はそれほど多くないと思う。私達精神科病院には、感染後に感染性が低下した認知症や統合失調症患者が転院してくるようにはなったが、フルPPE(個人用防護具)での対応は不要である。昨年、まだ具体的な対応策がわからなかった頃は、我々でさえ、防護服にN95マスクというPPEをして患者に臨んだが、その動きの悪さ、暑さ、息苦しさなどの身体的、精神的な疲労は非常に大きかった。これから東京では第4波を迎えるが、変異株の影響もあり、今までにない患者数が押し寄せてくると覚悟している。

私の病院のある八王子では、医療、介護、教育の代表が毎週WEB会議をして、地域のコンセンサスを作ってきたが、この会議の中でも面白いことがある。それは、コロナ患者に対する陰性感情が垣間見えることである。高齢者であっても健康に無頓着で肺炎球菌やインフルエンザワクチンは未接種。昼から大声でカラオケ。糖尿病で肥満、食事療法も不勉強。見るからに不摂生で非常識。緊急事態宣言を無視して宴会。慇懃無礼な態度で医療者にセクハラ発言。こんな人たちのために感染の危険を感じながら仕事をしなければならないのか、と思わない人はいないだろう。しかし、率直なこんな思いを発言することはSNSですら許されない世の中である。仲のいい同僚がいれば、バックヤードで、本当の気持ちを吐き出すことができるかもしれないが、職場での食事は感染対策のため、個別の会話も禁止で吐き出すこともできない。いったいどうしたらいいかと思ってしまう。

そこに、初期から新型コロナと戦ってきた東京医科歯科大学の高橋英彦教授(精神行動医科学分野)が大変良い提案をされている。燃えつき、離職対策として、個々がリーダーシップを持って仕事をし、全てが初体験であるため失敗を戒めず、失敗から学ぶ姿勢を認めること。決して命令に従うという形にならないように柔軟に創意工夫し能動的に対応していくこと。小さな目標を立て成功体験を積み重ね、自分はできるという信念(I think I can)・自己効力感を持ち、モチベーションを維持すること。全体像を示し、日々の仕事の意義を確認できるようにすること。お互い感謝とねぎらいを忘れないことなどが大切であると強調している。

コロナはまだまだ終息しない。しかし、ここで培ったスキルはきっと将来を明るくしてくれると信じている。もう少し頑張りましょう。

平川淳一(平川病院院長、東京精神科病院協会会長)[新型コロナウイルス感染症]

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