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【識者の眼】「教育・福祉との連携に関わる診療報酬の課題」本田秀夫

No.5064 (2021年05月15日発行) P.65

本田秀夫 (信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)

登録日: 2021-04-27

最終更新日: 2021-04-27

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子どもを対象とする精神科医療では、教育や児童福祉領域の関連機関等との連携が必要となることが多い。なかでも、知的発達症、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、限局性学習症などの神経発達症のある児童・生徒の診療では、学校関係者と緊密な連携を要する。

2020年度診療報酬改定では、「人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児」(児童福祉法第56条の6第2項)について、小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程または特別支援学校の小学部もしくは中学部の学校医等に対して、診療状況を示す文書を添えてその子が学校生活を送るに当たり必要な情報を提供した場合、月1回に限り診療情報提供料(250点)を算定することが認められた。いわゆる「医療的ケア児」を中心とした内容だが、「日常生活を営むために医療を要する状態」には神経発達症も含められる。学校医等への診療情報提供に診療報酬がついたことは、大きな一歩である。

それでも、まだ課題は多い。現場で実際に行われる連携で大きな比重を占めるのは、関係者が一堂に会して行うカンファレンスである。多忙な医師に配慮して関係者がクリニックに集合して下さることが多いが、必要であれば学校に医師が出向いて会議に参加するケースもある。文書のみで十分なコミュニケーションをとることが困難な場合には、顔の見える形で話し合い、方針を検討する方がうまくいく。しかし、このような対面形式でのカンファレンスに対応した診療報酬はまだ設定されていない。

また、現行の診療情報提供料で算定できる対象は、義務教育年代の子どもが通う学校に限られており、幼稚園、高等学校、大学は含まれていない。さらに、児童福祉施設や障害児施設も対象外である。要保護児童対策地域協議会などの法的に定められた会議も、診療報酬に関する規定はない。このため、そのような会議に出席することを経営陣が渋る医療機関があると聞く。

教育や福祉との連携は、医療側からみても診療をうまく進めていくために不可欠である。これが円滑に進められるためにも、診療報酬制度によりなんらかの形で保証していくことが重要であると考える。

本田秀夫(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)[子どもの精神科医療

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