No.5068 (2021年06月12日発行) P.63
岡本悦司 (福知山公立大学地域経営学部医療福祉経営学科教授)
登録日: 2021-05-26
最終更新日: 2021-05-26
新型コロナの流行は経済に甚大な影響を及ぼしているが、医療費への影響はどうだろうか? 新型コロナの医療費は感染症法に基づく公費負担が適用されるが、全額公費負担となる公費優先(法別番号29)ではなく、保険優先(同28)の扱いなので、保険者のレセプトデータにより推計が可能である。またレセプトの傷病分類コードとして、新型コロナには「その他の特殊目的用コード(2220)」が流行の初期の段階から付番されるようになった。
公開されたレセプトの集計データとして最大のものが協会けんぽデータであり、75歳未満人口の約3分1弱となる約4000万人をカバーしている。既に2020年12月診療分までの月別、都道府県別、性・年齢階級(十歳)別、入外別そして傷病中分類別データが公表されているので分析してみた。それによると同年4〜12月の9カ月間に3万5931件の新型コロナを主傷病とするレセプトがあり、その総点数(調剤含む)より医療費を算出すると約30億5276万円であった(このうち患者負担分が公費助成される)。
年齢階級別に分析すると、まず百万人当たりレセプト件数が最も多かったのは20代であった。一人から複数のレセプトが出ることもあるので、件数をそのまま感染者とみることはできないが、活動的な20代が感染率も最も高かったようである。しかしながら、総件数に占める入院レセプト割合でみると高齢者ほど入院割合は高かった。また医療費の密度を表す一日当点数でも高齢者ほど高い傾向が明瞭にみられた(図)。
今年に入って、若年者への感染率が高く、また重症化しやすいとされる変異型が増加しだしたが、それが新型コロナに関するレセプトデータにどう影響してくるか注視が必要であろう。
▶データ源:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat740/sb7200/sbb7204/r02/
岡本悦司(福知山公立大学地域経営学部医療福祉経営学科教授)[新型コロナウイルス感染症]