No.5071 (2021年07月03日発行) P.61
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
登録日: 2021-06-25
最終更新日: 2021-06-25
海外の五輪代表選手が事前のキャンプなどで訪日しているが、その際の対応が特に自治体では課題となっている。ここでは、受け入れの自治体のために、今からでも行いたい対応について示す。全体的なホストタウンの対応についてのチェックリストは参考資料を参照いただきたい。
相手国の感染拡大状況については、WHOのWeekly epidemiological update on COVID-19を調べていただくか、NY Timesのサイト(https://www.nytimes.com/interactive/2021/world/covid-cases.html)がわかりやすい。特に検査が十分に行われていない可能性のある国では、外務省の「たびレジ」や現地の英語新聞を確認したい。
これから冬を迎える南半球の南米やアフリカでは感染が拡大している。こうした国から受け入れる自治体では特に対応を厳重にする必要がある。選手は訪日前に壮行会などで多くの方と会って送り出されている可能性がある。
自治体として、訪問選手のワクチン接種状況は可能であれば入手したい。データがあっても、その活用や解釈は医療者でないと難しい。それでも、いつ、どの種類のワクチンを誰が接種しているかがわかるだけでも、感染者が出た場合の保健所の対応などに活用はできるであろう。
選手は入国時72時間前の検査で陰性証明された後、空港の検疫で再度検査を行う。その際に陰性であれば入国となる。その後もホストタウンで県などが手配した検査機関を通して定期的な検査が行われるようであるが、陰性であっても当面は油断してはならない。潜伏期間は最長14日間であり、滞在中に発症する可能性はある。しかし、練習の際など選手の行動にまでは介入はできないであろう。
対応する自治体の職員は、できれば事前にワクチンの接種ができているとよいであろう。できるだけ、特に試合の前には、後で自治体職員からの感染があったとされないような厳格な対応が必要である。
1例でも陽性者が出た場合の対応について、地元の保健所や医療機関と検査から治療までの手順だけでなく訓練もしておきたい。今後、チーム競技の中で陽性者が1名でも出た場合はかなり難しい対応が求められる。外交的課題とならないように自治体を支えなければならない。こうした対応については国や組織委員会が手順を含めて決めておくことが求められる。
【参考資料】
▶東京オリンピックパラリンピックにおけるホストタウンでの新型コロナウイルス感染対策準備アクションチェックリストの使用にあたって
[https://plaza.umin.ac.jp/~COVID19/core/host_town_infection_control_checklist.pdf]
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]