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【識者の眼】「ジェネリック医薬品の供給不足問題、安定確保までの期間の明示を」坂巻弘之

No.5076 (2021年08月07日発行) P.63

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2021-07-07

最終更新日: 2021-07-07

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小林化工、日医工の法令違反に対して業務停止処分等の行政処分が実施された。小林化工は6月末時点で業務再開には至っておらず、日医工は5月には一部製品の出荷を再開したものの、217品目が供給遅延となっている(7月1日時点、以下いずれも同様)。小林化工、日医工の出荷停止は、ジェネリック医薬品全体の安定供給に大きな影響をもたらし、市場全体で供給不足となっている。とりわけ東和薬品、沢井製薬に注文が殺到して新規契約が困難となっており、ジェネリック医薬品使用の混乱が広がっている。両社の出荷調整品目数をみると、沢井製薬が369品目、東和薬品が253品目となっている。

さらに、6月18日の報道によると、新たに薬価収載されたデュロキセチンのジェネリック医薬品(先発品名サインバルタ)15社の大半が発売日未定で、収載後ただちに販売するとしていた企業も出荷調整のリスクがあるという。このようにジェネリック医薬品市場では、どこかのジェネリック企業が欠品を起こせば、市場全体で供給不足になる構造的問題が明らかになっている。昨年は、新型コロナによる医薬品供給不足が懸念されていたが、実際には、ジェネリック企業の供給能力が一番のリスクであったといえる。

製薬企業は臨床現場での使用量を予測しながら製造計画を立てており、急激な需要増に対応できるだけの在庫を準備しているわけではない。特に特許切れ市場では、複数企業が製造するため、市場全体での製造量の最適化を図ることが困難である。そのため、特定企業がなんらかの原因で供給停止になると、市場全体で供給不足に陥ることになる。

医薬品供給不足は世界各国共通の問題となっている。米国FDAでは供給不足リスク薬と医療への影響度合いを公開しているほか、供給不足が予想される期間も分析している。わが国でも、今年3月に安定確保医薬品リストと安定確保スキームを公表したが、企業間で製造量の調整を図ることは独占禁止法に抵触する恐れもあり、広がるジェネリック医薬品の出荷調整についての具体的な対応策は示されていない。ジェネリック企業による欠品を完全に予防することは困難であるとしても、今後政府は、安定確保医薬品リストに基づき、ジェネリック各社に対して製品ごとに市場全体で供給不足に陥った際の増産体制とスケジュールについても明確にさせ、安定確保に回復するまでの期間を示すことが必要と考える。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[安定確保医薬品リスト]

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