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【識者の眼】「『ザイタク医療』⑨〜在宅療養を諦める時〜」田中章太郎

No.5087 (2021年10月23日発行) P.63

田中章太郎 (たなかホームケアクリニック院長)

登録日: 2021-10-11

最終更新日: 2021-10-11

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緊急事態宣言が解除された。第6波に備えつつもコロナ医療は急性期治療から後遺症対応になりつつある。後遺症を抱えながらも暮らすための医療、在宅医療がメインとなった。しかし、未だ認知が低く活用がまだまだ少ない。在宅医療の認知を高めることがやはり急務だ。

今月は、在宅療養を望むにもかかわらず『在宅療養を諦める時』はどういう時か、をお伝えしたい。医療依存度(医療を要する度合い)と介護依存度(介護を要する度合い)で説明する。

在宅療養を諦める一番のターニングポイントは、移乗困難となる時、すなわち、立ち上がり困難となる時だ。理由は介助介護量が激増するからだ。しかし、介護技術や介護保険のサービス内容・量も、日々改良され、また、リフトなどの福祉用具、介護用ベッドの多機能化などで、介護依存度の増大があっても在宅療養を諦めることはなくなりつつある。 一方、医療依存度の増大による在宅療養の諦めは今も多い気がする。過度の経管栄養や中心静脈栄養。心機能維持目的のポンプ厳重管理。尿路バルーン管理の過剰導入。通院が非常に困難になってからの化学療法継続。止め時がわからない透析管理。糖尿病でインスリン治療生活を無視した頻回注射。高カロリー輸液下の胸腹水除去、等々。

病室を在宅にそのまま移行するのは在宅医療ではない。医療のために暮らしがあるのではなく、暮らしのために医療がある。暮らしを手にするために過剰医療の縮小を図る時、在宅医の腕が試される。地域包括ケアの肝は医療依存度縮小への挑戦(急性期病院地域医療連携室と在宅医の共同作業)にあるとタナカは考える。この国は今、モノに溢れ何でも手に入る豊かな? 時代。医療においても例外ではない。コンビニエンスな感覚で医療が容易く利用できる。しかし、このままでは国民皆保険制度は危うい。すべてにおいて諦めろとは思わないが、社会を維持するために、そして、未来の日本のために、何もかも200%安易に望むべきではない。実際、しっかりとした治療方針の元、(しっかりと人生会議のようなことに向き合いながら)医療依存度縮小で在宅療養が可能となることが多い。

丁度いい塩梅の医療依存度縮小にこそ、在宅医はもっとエネルギーを注ぐべきだ。在宅療養への挑戦において、介護依存度はいくら大きくても在宅療養は可能だが、医療依存度の縮小は今後さらに必須となる。この努力を惜しむべきではない。これがザイタク医療への近道だと考える。

田中章太郎(たなかホームケアクリニック院長)[在宅医療]

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