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【識者の眼】「特別児童扶養手当(知的障害・精神の障害)の認定の地域差」本田秀夫

No.5087 (2021年10月23日発行) P.60

本田秀夫 (信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)

登録日: 2021-10-11

最終更新日: 2021-10-11

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2021年9月27日に共同通信で「障害児手当の判定ばらつき裏付け:厚労省研究班、実態調査で」という見出しの記事が掲載された。障害児の保護者に支給される「特別児童扶養手当」をめぐり、自治体によって判定にばらつきがあるとする実態調査の結果を厚生労働省の研究班がまとめたというものである。筆者はこの研究班の研究代表者であり、この記事に際して取材を受けた。短い記事で調査内容がかなり割愛されていたので、ここで補足を含め紹介させていただく。

この研究班では、同手当のうち知的障害・精神の障害に関する認定について調査を行った。認定業務は、主治医による認定診断書を添えて保護者が申請し、各都道府県・政令指定都市の判定医の判定をもとに行われる。調査では、都道府県と政令市のうち協力が得られた40自治体を対象に、各自治体で2020年5月〜2021年1月のうちの4カ月間に新規に判定された計4419件の認定診断書を分析した。

自治体ごとの認定率(手当受給該当と判定される率)は33.6〜100%の範囲であり、 5自治体で100%、8自治体で80%以下であった。判定結果に強い影響を持つ因子として知能指数(IQ)または発達指数(DQ)および「要注意度」の項目が挙げられたが、2級判定となった児童の平均IQ/DQ は認定率が高い自治体で有意に高かった。申請された児童の平均IQ/DQの範囲は48.1〜77.9であった。申請された児童の平均IQ/DQ と認定率との間には有意な相関を認めなかった。

本調査により、認定される目安となる基準が自治体によって異なっている可能性が示唆された。ただし、今回は申請された児童のみを対象としたため、検討しきれていない事項もある。たとえば、この手当は所得制限があるため、自治体による所得格差の影響があるかもしれない。また、主治医が認定診断書を書くかどうかも影響する可能性がある。実際、本調査では、申請される児童のIQ/DQ が低いために認定率が高くなっていると考えられる自治体がある一方で、認定率が高いが故にIQ/DQ が高い児童も申請していると考えられる自治体もあった。

いずれにせよ、同手当の認定事務の適正化を図る必要があることは確かである。本研究班では、認定診断書の様式の改定案を作成し、その信頼性・妥当性の検討を進めているところである。

なお、この調査報告書は、厚生労働科学研究成果データベースから閲覧できる(https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/148085)。

本田秀夫(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)[小児医療][精神科医療]

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