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【識者の眼】「新医療機器・新体外診断用医薬品の品質管理に不可欠なQMS適合性調査」藤原康弘

No.5089 (2021年11月06日発行) P.58

藤原康弘 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)

登録日: 2021-10-25

最終更新日: 2021-10-25

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本欄の6回(No.5067)で取り上げた医療機器等の承認審査に続き、承認審査に不可欠な品質マネジメントシステム(Quality Management System:QMS)を紹介する。

QMSは、業者が医療機器等提供の規制要求事項を一貫して満たす能力を実証し、製品やサービスの品質を向上するための規格である。欧州ではQMS適合品に「CEマーク」が付されており、マークの付いた機器を使用する読者も多いのではないか。日本では、医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(以下、QMS省令)が法的な規制要求事項である。錠剤・注射剤など製品タイプが限られる医薬品と違い、医療機器にはメス・ピンセットからMRI・ペースメーカーまで幅広い品目が含まれ、品質マネジメントシステムも医薬品のGMPより包括的である。工業製品と同様に国際規格のISO13485をベースに策定されている。

医療機器も以前はGMPと呼ばれていたが、法改正でQMSに名前も中身も変更された。背景には、医療機器関係者が医薬品と同じ規制に抵抗を感じ、医療機器は別だ、とする意識もあろう。

QMSへの適合性調査は、PMDAが承認審査する製品は原則すべてPMDAが実施する。GMPと異なり、2013年の法改正で都道府県庁から調査権限を引き上げた格好だ。医療機器は製造過程で県境や国境をまたがる製造所が関わることが多く、品質システム全体を都道府県の区割りでは見ることはできない。一方、低リスク医療機器は民間登録認証機関の認証で流通(PMDAの承認は不要)するため、登録認証機関がQMS調査を行っており、民間機関と競合関係にある部分でもある。承認審査と並行して行う調査と、承認後概ね5年ごとに行う調査があり、毎年、国内外の約4000施設に対して実施している。実地と書面のどちらで行うかは、製品の新規性やリスク、不具合、リコールの頻度などを考慮している。

QMSにも国際的な取組みがある。医療機器単一調査プログラム(Medical Device Single Audit Program:MDSAP)だ。日本、米国、カナダ、オーストラリアおよびブラジルが参加し、5カ国すべてが適当と認定した調査機関のQMS調査結果(MDSAP報告書)を各国で活用する取組みである。日本は2015年に参加、2016年からMDSAP報告書を試行的に受入れ、2022年に本格化する。医療機器は国際流通品なので、調査の効率化につながる。

コロナ禍での人工呼吸器や各種診断キットの承認でも、QMS調査をリアルタイムで行っている。高い品質の医療機器等を医療現場に届けるために、PMDAがQMS適合性調査業務を担っていることを是非、皆さんに知ってもらいたい。

藤原康弘(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)理事長)[薬事]

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