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【識者の眼】「総合診療医は19番目の臓器別専門医ではない!」武久洋三

No.5089 (2021年11月06日発行) P.52

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2021-10-27

最終更新日: 2021-10-27

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19の基本領域専門医を養成する臓器別専門医制度が2018年4月より発足しました。各学会がそれぞれ専門医制度を運営していましたが、2014年5月に一般社団法人日本専門医機構が設立され、まとめられました。

1946年から始まった「インターン制度」に始まる戦後日本の医師養成制度は、インターン闘争の結果1968年に廃止され、以後、医学部を卒業し国家試験を受けて合格すれば、直接大学の診療科ごとの医局に入局し、実地医療の修練を受けていました。各医局は教授の専門とする医療の修練所でもありました。その後2000年に医師法が改正され、2004年より現行の新医師臨床研修制度がスタートし、2年以上の臨床研修を受けることが必須となりました。すると大学の医局に所属する医局員が少なくなり、付属病院の機能低下をもたらしました。そこで2018年から新専門医制度が開始されました。大学の医局は教授が運営しているので、専門の教授が少ない科目は希望者が少なくなります。現在、総合診療医を専門とする医局は極端に少ないので、総合診療医を希望する卒業生が極端に少なくなっているのです。しかし、総合診療医は臓器別専門医という範疇に入るのでしょうか。

日本の高齢化は著しく、全国の高齢化率は現在29.1%です。かつて老人医療費が無料化された当時の高齢化率が約7%でしたので、正に今昔の感があります。入院患者の80%近くが高齢者である現在、多くの臓器の病変を抱え、各臓器の機能低下が集合した症状を示すことの多い高齢患者の治療には総合的に診療のできる知識や技術のある総合診療医が担当するべきです。

したがって、卒後2年間の臨床研修のあと、2年間は臓器別専門医としての技術を磨くとともに、総合診療医としての知識とスキルを習得する研修期間としてはいかがでしょうか。やはり高齢者に対する総合診療研修を何らかの形で行わなければなりません。現在は高齢者の病態をよく理解できていない医師による急性期医療の結果、低栄養・脱水・貧血等の後遺症を抱え、より重症化してポストアキュートの病院に紹介されてくる患者を回復させるために努力をしている状況が続いているのです。

総合診療医としての知識や技術はすべての医師に必要だと思いませんか。19番目の専門医などと言わないで、すべての医師が備えていなければならない技術であり、すべての臓器別専門医の研修とともに同時に必須研修として学ぶべきではないでしょうか。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[専門医制度][臨床研修制度][総合診療医]

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