No.5096 (2021年12月25日発行) P.58
水野泰孝 (グローバルヘルスケアクリニック院長)
登録日: 2021-12-09
最終更新日: 2021-12-09
最近、帯状疱疹に関する問い合わせを受ける機会が増加している印象です。メディア等で帯状疱疹ワクチンに関する情報提供が行われていることもあり、ほとんどの方は帯状疱疹ワクチン接種に関する相談なのですが、昨年よりCOVID-19と帯状疱疹発症との関連性に言及したものやCOVID-19ワクチン接種後の帯状疱疹発症事例などの学術論文も散見されています。
van Damら1)はCOVID-19ワクチンを接種後に帯状疱疹を発症した2症例を報告していますが、その考察の中で各データベースから発症した割合を明記しています。The European Eudra Vigilance Databaseによれば、ファイザー製で4103例(1.3%)、モデルナ製で590例(0.7%)、アストラゼネカ製で2143例(0.6%)、ヤンセン製で 59例(0.3%)。The United States Vaccine Adverse Event Report System(VAERS)によればファイザー製で2512例(1.3%)、 モデルナ製で1763例(0.9%)、アストラゼネカ製で302例(0.7%)。The Dutch pharmacovigilance center Larebによればファイザー製で300例(0.8%)が報告されています。さらなる分析が必要と提言していますが、この論文以外にも症例ベースでの報告は国内外で散見されており、単なる偶然とは言い難い現象とも考えられます。
ワクチン接種後に免疫が低下した状態になっているのかどうか、その証明は困難ではありますが、ファイザー製ならびにアストラゼネカ製ワクチンの臨床試験において注射後の一過性リンパ球減少が確認されたという報告2)3)もあり、帯状疱疹ウイルスの再活性化の可能性が示唆されています。その一方で、ファイザー製ワクチンの安全性を評価した論文4)に、COVID-19に罹患した場合とワクチン接種した場合の有害事象を比較検討したデータがあり、実質上はワクチン接種後の有害事象としてリンパ節腫脹、帯状疱疹、虫垂炎、心筋炎などが確認されましたが、心筋炎以外は有意なものではないとの結論に至っています。
日本でも使用できるようになった帯状疱疹に対する組み換えサブユニットワクチンは認知度が低くかなり高価ではありますが、このような機会から高齢者へ推奨されるワクチンのひとつとして選択肢に加えることも一案かと考えます。
【文献】
1)van Dam CS, et al:Int J Infect Dis. 2021;111:169-71.
2)Mulligan MJ, et al:Nature. 2020;586(7830):589-93.
3)Folegatti PM, et al:Lancet. 2020;396(10249):467–78.
4)Barda N, et al:N Engl J Med. 2021;385(12):1078-90.
水野泰孝(グローバルヘルスケアクリニック院長)[新型コロナウイルス感染症][帯状疱疹]