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【識者の眼】「外来診断訴訟の高リスク:腸閉塞」徳田安春

No.5098 (2022年01月08日発行) P.62

徳田安春 (群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)

登録日: 2021-12-21

最終更新日: 2021-12-21

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外来での腸閉塞の診断の遅れは訴訟リスクがある。1997年から2016年の間における腸閉塞関連訴訟を調べた研究によると、医療過誤対象の診療科で最も多かったのは外科だったが、2位と3位はそれぞれ内科と小児科であった1)。診断の遅れとそれに伴う不適切な治療が最も多く、次いで診断の遅れとそれに伴う他院への紹介の遅れであった。腸閉塞の原因の中で頻度が高いのは、術後の癒着性だ。代表的な手術適応は、穿孔による腹膜炎と腸閉塞絞扼である。

腸閉塞のうち頻度の多いのは小腸閉塞だ2)。そのうち90%は腹部手術の既往があり、産婦人科的手術が最も多かった。多い症候は、腹痛(92%)、嘔吐(82%)、腹部圧痛(64%)、腹部膨満(59%)。約90%で腹部単純X線検査に異常が認められた。腹痛と嘔吐を主訴とする場合では、まず内科や小児科などの内科系に受診することが多いので、内科系診療科では要注意だ。

最近は高齢者の腸閉塞が多いのも問題だ。高齢者での腸閉塞のピットフォールは、若年者と比べて、身体所見の陽性率が低いこと。反跳圧痛や筋性防御が出にくいので、診断遅延のリスクが高くなる。

最近の診断テクノロジーの進歩は腸閉塞の診断改善をもたらしており、特に腹部の画像診断の進歩が著しく、エコーとCTがそれだ。これらの画像検査を所有し、実施することができ、そしてその読影能力が十分あるエキスパートがスタンバイしていることが前提であるが、この画像検査を実施する判断を行うことができれば、腸閉塞の早期診断につながるといえる。腸閉塞の診断では、腸閉塞そのものの存在だけでなく、手術適応があるかどうかの判断が大切である。そのためにも外科コンサルテーションのタイミングをタイムリーに行うことが求められる。

【文献】

1)Hiyama T, et al:Cogent Med. 2018;5(1):DOI:10.1080/2331205X.2018.1529847.

2)Cheadle WG, et al:Am Surg. 1988;54(9):565-9.

徳田安春(群星沖縄臨床研修センターセンター長・臨床疫学)[診断推論]

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