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【識者の眼】「敗血症患者をどこに入院させるべきか〜right care, right place, and right specialist」志馬伸朗

No.5102 (2022年02月05日発行) P.64

志馬伸朗 (広島大学大学院医系科学研究科救急集中治療医学教授)

登録日: 2022-01-06

最終更新日: 2022-01-06

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敗血症は現在もなお致死率が20%に迫る致死的病態である1)。一方で、この病態はありとあらゆる診療の場において、専門診療科を超えて発生しうる。そして多くの敗血症は入院診療を必要とする。問題は、どこで誰が入院診療するべきか、という点だ。

「日本版敗血症診療ガイドライン2020」では2)、“初期輸液蘇生に不応の敗血症は集中治療ができる場所で管理する”との推奨(Good Practice Statement)がなされている。初期輸液蘇生は概ねどこの診療現場でもどの専門医でも行うことのできる敗血症の初期診療項目である。しかし、これに不応である場合には、敗血症性ショックである可能性(つまり重症度や死亡率)が高くなる。このような状況では、患者を速やかに集中治療管理下に置くことが望まれる。米国集中治療医学会の「ICU admission, discharge, and triage guidelines(ADT ガイドライン)」でも3)、生命の危険がある敗血症患者は集中治療室に入室させることを推奨している。

加えて、敗血症患者のICUへの搬送は早ければ早いほど良く、1時間遅れるごとに死亡オッズが上がる4)。さらに、ICUでの敗血症診療は集中治療医が担うことが望ましい。日本の観察研究では敗血症患者を集中治療医による閉鎖式システムにて管理することで、敗血症バンドルの遵守率が高くなることがわかっている5)

しかし現実は簡単ではない。日本における集中治療の提供可能な病床数は、特定集中治療室管理料、救命救急入院料、ハイケアユニット管理料算定病床をすべて含めて人口10万人あたり14床で、決して多くはない上に6)、利用可能性は施設により限られている。さらに集中治療専門医は全国でわずか2000人あまりにすぎない。理想と現実の乖離があるのだ。

繰り返しになるが敗血症はコモンな病態である。早期に認識し、迅速に初期介入をすることで、集中治療が必要な患者群を素早く抽出し、速やかに入院あるいは転院させる診療フローを常識的なものとすることが必要だ。これをサポートするために、重症患者集約化を前提とした搬送システムや、地域ごとに診療の核となる集中治療室の整備と、そこに専門医の配置が進むような医療行政デザイン構築が必要である。このコンセプトは、コロナ禍を経た今、より明確になったと言えるだろう7)

【文献】

1) Imaeda T, et al:Crit Care. 2021;25(1):338.

2) Egi M, et al:J Intensive Care. 2021(1);9:53.

3) Nates JL, et al:Crit Care Med. 2016;44(8):1553-602.

4) Li Q, et al:J Int Med Res. 2018;46(10):4071-81.

5) Abe T, et al:Crit Care. 2018;22(1):322.

6) [https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627782.pdf]   

7) Higuera Lucas J, et al:Lancet Reg Health West Pac. 2021;14:100247.

志馬伸朗(広島大学大学院医系科学研究科救急集中治療医学教授)[敗血症の最新トピックス

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