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【識者の眼】「オミクロン株のインパクトをどう想定して被害を最少化するのか」和田耕治

No.5101 (2022年01月29日発行) P.55

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2022-01-18

最終更新日: 2022-01-18

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オミクロン株の特徴が次第に明らかになってきた。感染の伝播力は強く、接触機会が減らなければ短期間でこれまでの数倍の感染者数となる。沖縄県では、かつてのピークであった昨年の夏の2倍の、1週間で10万人あたり700人に迫ろうとしている。このぐらいの感染者数となると、次第に検査の能力や医療へのアクセスも限られるようになり、実際の感染の広がりが徐々に見えなくなる。こうしたことはその他の、特に都市に今後起こることが想定される。

感染を抑えるという点において重点措置や緊急事態宣言という選択肢はある。早ければ早いほどいいが、その実効性のためには市民の納得感が必要であり、求められる対策が実践されなければならない。何より発令されても、その後も既に広がった感染者数は積み上がり、発令の効果が感染者数減少として表れる状況はなかなか見えてこない。一方で様々なことが起きた際にこうした措置がなされていなければ不作為とも指摘される可能性もある。

インパクトについては、たとえば50歳未満でワクチン接種をしていると死亡リスクは以前より抑えられるが、これまでと同様に透析患者や妊婦さんなどハイリスクの方をどう守るかは課題となる。医療逼迫で病床を必要とするのは75歳以上の高齢者が多くを占めることになりそうである。また、子どもたちへの感染が広がる中で、特に5歳未満は米国や英国で入院患者が増えているという報告がある。

医療や介護の現場では感染が広がりやすく、職員だけでなく、海外ではその他の病棟での感染拡大で死亡者数が増加したことが報告されている。成人の間では、職場や地域で感染が広がれば重要な業務も一時的に停滞する可能性もある。学校も今の運用では多数の休校となりえる。

以上より、できるだけ地域の感染を抑えていくことが必要ではある。しかし、市民にどう説明して、どう行動していただくのか。また、感染が抑えられたとしてもワクチン接種が間に合わなければ再び免疫のない人の間で数カ月後に流行する可能性もある。

感染の拡大スピードは速く、今週と来週は各地域で感染拡大が続くであろう。当面はできるだけ感染者を減らすことが求められるが、飲食店の営業時間の短縮や人数制限だけでは収まるような状況でもなくなっている。かといって、成人に行動制限を強く要請するほどのリスクはないともいえる。

まさに、こうした複雑な要件の中でどういう選択肢をとっていくのかきわめて難しい局面である。どう手を打つのかを次に起こりえることも含めて考えながら進めなければならない。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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