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【識者の眼】「マッキントッシュ喉頭鏡かビデオ喉頭鏡か」今 明秀

No.5105 (2022年02月26日発行) P.63

今 明秀 (八戸市立市民病院院長)

登録日: 2022-01-19

最終更新日: 2022-01-19

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気管挿管に使用する銀色に輝くマッキントッシュ喉頭鏡は習熟するまでに、経験を要するので初学者は挿管に失敗することがある。これに対して2006年に発売された国産ビデオ喉頭鏡エアウェイスコープは、液晶画面の中心部に声帯を持ってくれば、スタイレットなしで簡単に挿管できる。スマホで液晶画面に慣れている研修医は後者を好む。さらにコロナ陽性者に気管挿管するときは、患者の口と術者の距離をより離すことができる後者が推奨されている。マッキントッシュ喉頭鏡は新進気鋭ビデオ喉頭鏡に負け越してしまったのだろうか。優位なのはコストだけか。

前夜から続いた大雨だった。下水道工事現場で崩落事故が起きた。地下4mで掘削工事をしていた男性作業員が頭の上厚さ3mの土砂に生き埋めとなった。昼12時28分救急要請。同僚はスコップで土砂を掘り起こしたが男性は発見されなかった。救急車が現場到着し、隊長はドクターカーを要請した。現場では救出の最後の手段としてパワーショベルが使われた。男性の顔面にショベルの爪が引っ掛かり、男性の頭が地上に引き上げられた。男性は立位状態で胸から下は埋まったままで意識なし、呼吸は弱い、脈拍微弱、顔面は激しく引き裂かれ泥と血液が噴き出て窒息状態だった。ドクターカーには救助成功、窒息、意識なしが無線で伝わった。12時50分ドクターカーが救急車に横付けされた。顔面は右眼球から下顎にかけて大きく崩れていた。私は左斜位の男性の口らしい穴にマッキントッシュ喉頭鏡を入れた。銀色のブレードの光の先は赤色に全部染まっていた。マギール鉗子で血餅を、太い吸引チューブで血液を除こうとするが、喉頭鏡越しの視野は変わらず真っ赤なだけだった。すると赤い血の中から空気の泡が噴き出るところが見えた。私は「ここだ、今だ」と思い、右手に持っていたスタイレット付きの7mmの気管チューブを一気に泡の中央に突っ込んだ。もし失敗したら、メスで輪状甲状靱帯を切開する準備はしていた。挿管は上手く行った。チューブ固定する顔面の皮膚はなくなっていたので、指でしっかりチューブを固定した。12時54分現場を出発した。劇的救命だ。

軽い早い正確なビデオ喉頭鏡はwith corona時代では標準手技になった。でも私は思った。外傷窒息のココ一番では、マッキントッシュ喉頭鏡だと。

今 明秀(八戸市立市民病院院長)[救急医療]

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