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【識者の眼】「無法地帯とも言えるSNSにおける情報発信」大野 智

No.5104 (2022年02月19日発行) P.59

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2022-02-03

最終更新日: 2022-02-03

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皆さんは、SNS(Social Networking Service)を利用されているだろうか? 具体的には、LINE、Twitter、Instagram、facebook、YouTubeなどである。総務省の調査では国民の7割強がSNSを利用しており、年々増加傾向にある1)。また、小学生が将来なりたい職業ランキングで“YouTuber”が1位となったことも話題となった2)

SNSの利点のひとつに、誰もが簡単に情報発信できることが挙げられる。裏を返せば、健康・医療に関して、科学的に不正確な情報が発信されてしまうリスクにもつながる。実際、YouTubeで「末期がん、健康食品」で検索したところ「がん末期から奇跡の回復」「がんを消滅させる食べ物」といったタイトルの動画が並ぶ。また、編集技術も進歩しており、プロ顔負けの動画に仕上がっているものもある。

なお、動画の内容が医学的に不正確であっても、憲法で表現の自由が保障されているため罪に問うことは難しい。健康増進法や薬機法・医療法などでも、動画が広告として位置づけられていなければ取り締まることもできない。つまり、情報を“受け取る側”に真贋を見分ける目を持つことが求められてくる。

しかし、ややこしいことに、IT技術の発達が裏目に出るような現状もある。たとえば、一度インターネットで情報を調べると、検索サイトが提供するアルゴリズムによって、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能が働き、まるで「泡」の中に包まれたように自分が見たい情報しか見えなくなること(フィルターバブル)が起こる。また、SNSには価値観の似た者同士が交流する機能を備えたものがあり、そのグループ内では特定の意見や考え方が増幅され影響力が増大してしまうエコーチェンバー現象が生じることがある。場合によっては、陰謀論や誤情報などが広まる一因にもなる。

宣伝になってしまうが、筆者が関わる厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進事業では、ホームページを作成するほか、最近ではTwitter(https://twitter.com/eJIM_PR)やYouTubeアカウント(https://www.youtube.com/channel/UCJMVKqe2j1jz-q0EiO4R-RA)を作成し情報発信を始めた。興味のある方はフォローして頂けると幸いである。

【文献】

1)令和3年版情報通信白書:年齢階層別ソーシャルネットワーキングサービスの利用状況(図表 4-2-1-8).

   https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd242120.html

2)進研ゼミ小学講座:小学生1.6万人の意識調査ランキング2021..

   https://benesse.jp/juken/202112/20211217-1.html

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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