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【識者の眼】「海外から日本への帰国時における検疫での検査について」和田耕治

No.5116 (2022年05月14日発行) P.55

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2022-05-02

最終更新日: 2022-05-02

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新型コロナウイルスへの対策は、強めること以上に緩和することが難しい。対策を強化する際には、どういう条件になったら、また、どういう目的が果たせなくなったらやめる、または変えるということを含めたロジックを明らかにしておくべきだが、できていないことが多い。

日本は島国であり、感染症は海の向こうからやってくるということからか、「水際対策」への市民の期待は大きいように思う。それでも、変異株が確認された場合、水際対策は国内への流入については時間稼ぎであり、完全に防止することはできないという理解はされてきた。

帰国の際の検査は、①現地出国時の72時間前の陰性の確認、②入国時の抗原定量検査、が行われている。海外との往来が活発化し、各国がこうした対応をやめている中で、日本はどう段階的に変えていくのか。

英国では段階的に、ワクチン3回接種を行っている人に対して、入国前の検査や入国時の空港での検査ではなく、入国した上で検査を2日以内に自分で行うなどの措置とし、その後不要にしていった。ワクチン接種の種類や回数などが条件に当てはまっていない場合には、やや厳しい条件があったが、それでも、3月18日にすべて制限が撤廃された。

さて、日本ではどうするか。入国時の空港での検査は、到着から結果が得られるまで数時間に及んでいる。また、陽性となった場合は自宅ではなく、施設での隔離となっている。そして、これらの検査は税金で賄われている。また、海外へビジネスや旅行に出る人も増えている。帰国時に陽性であれば施設に7日程度隔離というのは大きな不安であり、実際にそうなれば負担である。無症状の人も増えており、理解が得られないこともあるようだ。

一時期は、特定の国で入国時の陽性者が相次ぎ、そもそも搭乗の72時間前の陰性が確認されているのかが課題となった。現在も、一定数の陽性者が空港の検疫で確認されている状況での対応の変化には、国内からも批判が出る可能性はある。空港で陰性を確認しないことにしたとすると、公共交通機関の利用にあたっての1つの条件としていただけに、指摘があるであろう。

かつて、入国した人がルールを守らず、入国後にすぐに飲み会などをして感染を広げたといったことなどがあったことから、次第にルールが厳格化してきた。そのため、こうした批判が出ないためにも海外を移動する人には一層注意していただきつつ、制限は緩和する方向に一歩踏み出したい。そして、海外からの観光客の受け入れも模索したい。

※本稿は、2022年5月1日に執筆しています。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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