株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「脱マスクとマスク依存」山本晴義

No.5120 (2022年06月11日発行) P.59

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)

登録日: 2022-05-30

最終更新日: 2022-05-30

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新型コロナウイルスの影響のひとつに言わずもがなマスク生活が挙げられる。政府や医師会でもマスク着用についての議論がなされているが、これだけ長いマスク生活が続くとマスクについての考え方もだいぶ変わってくるのが当然である。脱マスクの是非について、キャリアや転職全般に関する民間研究調査機関の運営会社が今年の5月、約700人の社会人に行ったインターネット調査によると、現状マスクの着用率は8割で、1日の平均着用時間は8時間、今後もマスクを着け続けるかについては約9割が続けると回答している。既にマナー化しているからという理由が多く、マスクをしていないと気になってしまう心理的義務も働いているようである。また、全体の6割超が、マスク非着用者に対して“関わりたくない・不快に感じる”などの否定的意見を述べている。日本では、すぐに脱マスクは難しそうな現状である。

マスクについて心理的な側面から見ると、顔が隠れていると、普通よりも攻撃的になりやすい、不愛想になりやすいと言われている。また、マスクをすることで表情の読み取りが難しく、コミュニケーションがとりづらいという問題もあるだろう。

実は、新型コロナウイルスが流行する以前から衛生目的ではなくマスクをする“だてマスク”の人々は一定数存在した。もともと、他人にどう思われているかが気になりやすい対人不安が強い人は、マスクで顔を覆っているほうが、気持ちが楽になり社会活動がしやすくなるかもしれない。マスクを着けていることで活動しやすくなるのであればそれもよしであるが、どのような理由であれマスク社会だからこそ気を付けたいこともある。まずは、見えないからいいではなく、意識的に相手の気持ちを想像しようとすることが必要である。また、コミュニケーション量にも気を付けて、実際の会話を増やすことも大切である。

もし、マスク依存を改善していきたいと思う場合には、あえて不安な場面にさらして克服するという心理療法がある。その際は、不安を感じにくいハードルが低い場面からマスクを外す練習をすることがよい。たとえば対面はハードルが高いなら、ごく身近な人と行われるオンライン会議で外してみるといったチャレンジである。

また、マスクに依存する問題には安心して社会と関わることへの不安があるので、無理にマスクを外すことにこだわらず、時間をかけて身近な人との温かい交流を増やしていくことが大事である。

山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[マスク生活]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top