日本医師会の会長職を1期2年で終えることとなった中川俊男氏(北海道医師会)は6月25日、日医会館で開かれた定例代議員会で会長として最後の挨拶をし、「どんなことにも区切りはある。この区切りは私が考えていたよりも少々早いが、後悔はない。あるのは皆様への感謝の気持ちのみ。静かに日本医師会を去る」と代議員に謝意を表した。
中川氏は、新型コロナウイルス感染症との戦いに明け暮れた2年間を振り返りながら、日医会長として最も誇りに思った瞬間として、菅義偉首相(当時)からの1日100万回のワクチン接種要請に「全国の医師会の先生方が底力を見せた」時を挙げた。
中川氏は「新型コロナ感染症の収束を見通せないまま、日本の医療、医療政策の行く末を思えば、様々な思いが残る。私のこの思いは間もなく選任・選定いただく新会長、新執行部に託す。新執行部には数々の困難が待ち受けていることだろう。新会長には日本医師会長にならなければ分からない苦難が待ち受けていることだろう。しかしその先には希望と栄光の日々が待っている。必ず日本の医療を支えてくれると私は信じる」と、後任の会長と執行部にすべてを託す考えを強調した。
中川執行部内から反旗を翻す形で出馬し、この日の役員選挙で新会長に選ばれた松本吉郎氏(埼玉県医師会)は定例代議員会後の記者会見で、「中川先生には過去10年間非常に薫陶を受けた。私の医師会活動の師に近く、非常に尊敬できる方だと思っている。ただ若干考えが違うところもある。今日の中川先生の最後の言葉は非常に感慨深く拝聴した。我々新執行部にその思いを託すとはっきりおっしゃったので、素晴らしい引き際だったのではないか」と感想を述べた。
「中川前会長に顧問などのポストを与えるか」との質問に対しては「現時点では全く考えを持っていない」と回答。横倉義武日医名誉会長(福岡県医師会)の処遇については「名誉会長という称号はそのまま名乗っていただければいいのではないか」と述べた。
中川俊男日医会長 最後の挨拶(要旨)
2年前に執行部が発足してから新型コロナウイルス感染症に正面から向き合い、全国の医師会の先生方と手を携えて戦ってきた。苦しい日々が続いたが、とても充実した毎日だった。
ワクチン接種においては当時の菅総理から1日100万回接種の要請に全国の医師会の先生方が底力を見せた。日本医師会長としてあの時ほど誇りに思ったことはない。
私は常任理事2期4年、副会長5期10年、会長1期2年の16年もの長きにわたり歴史と伝統のある誇り高き日本医師会で仕事をすることができた。この幸運はすべての皆様のおかげだと感謝している。
この間に出会うことができた全国の医師会の先生方、事務局職員の皆様、時には激しい議論を戦わせた厚生労働省の官僚の皆さん、大所高所からご指導をいただいた国会議員の先生方にこの場を借りてお礼と感謝を申し上げたい。
新型コロナ感染症の収束を見通せないまま、日本の医療、医療政策の行く末を思えば、様々な思いが残る。私のこの思いは間もなく選任・選定いただく新会長、新執行部に託す。新執行部には数々の困難が待ち受けていることだろう。新会長には日本医師会長にならなければわからない苦難が待ち受けていることだろう。しかしその先には希望と栄光の日々が待っている。必ず日本の医療を支えてくれると私は信じる。
代議員の皆さん、一致団結して将来の希望に向かって歩み始める新執行部、何よりも新会長を全力で支えてください。これが私の心からの最後のお願いです。
参議選まで2週間もある。自見はなこ先生の上位当選を目指して、1日170万回のワクチン接種を達成した全国医師会の底力を再び集結させましょう。できるはずです。
16年間私なりに全力で駆け抜けてきた。どんなことにも区切りがある。この区切りは私が考えていたよりも少々早いが、後悔はない。あるのは皆様への感謝の気持ちのみ。静かに日本医師会を去ります。
長い間たくさんのご指導とご支援を賜りました。代議員の皆さん、本当に、本当にありがとうございました。
【関連記事】