日本医師会の松本吉郎会長は5月29日の定例記者会見で、財務省の財政制度等審議会が27日にまとめた建議「激動の世界を見据えたあるべき財政運営」の社会保障分野について、「正直に言って非常に腹立たしい内容ばかりで、何度も反論したいと強く思っている」と強い口調で厳しく批判した。
松本会長は財政審建議が財政健全化の必要性について、医療提供が滞り、国民生活に支障を来すなどのリスクを回避し持続可能で豊かな社会を実現するための努力にほかならないと記載している点に言及。「近年の税収増を必要な社会保障にしっかりと充ててこなかったために、今般の高額療養費制度の見直しや地域医療支援病院の診療休止に象徴されるように、すでに国民生活に支障を来しており医療の提供が滞ってきている」と実態との矛盾点を指摘した。
このほか建議では医療の理想像について「リフィル処方や長期処方・オンライン診療の普及により患者の通院負担の軽減や利便性向上につながっていること、さらには、軽度な症状であれば自身で対応するなどセルフケア・セルフメディケーションが浸透していること」「医師に代わり薬の処方を行うなど薬剤師の活躍の場が広がっていること」と明記。この点について松本会長は、「医療・介護関係者からみるとまったくもって納得感が得られない机上の空論」と批判した。
松本会長はこうした財務省の動きを牽制しつつつ、政府が6月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に日医がかねて主張している要望を反映するため、来週に国民医療推進協議会を開催、医療・介護業界が一致団結した総意としての決議を取りまとめ、政府・与党に働きかけを強める姿勢を示した。