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【識者の眼】「出入国緩和に伴い見直しておきたい輸入感染症」水野泰孝

No.5124 (2022年07月09日発行) P.61

水野泰孝 (グローバルヘルスケアクリニック院長)

登録日: 2022-06-29

最終更新日: 2022-06-29

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多くの国や地域で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への規制緩和が進む中、日本でも2022年6月から検疫措置が見直され、6月10日からは外国人旅行者の入国も条件付きで認められるようになりました。2022年7月時点で日本に入国するためには、滞在していた国や地域にかかわらず、現地出国前72時間以内のCOVID-19検査証明書が必要ではあるものの、リスクの低い地域から入国する場合はワクチン接種歴の有無を問わず到着時の検査は不要、待機期間もありません1)。すなわち、入国3日前に検査をした後は症状が出ない限り日常生活に戻ることになるわけです。これまでの流行の波の多くは海外からの変異株が発端と推測されていますので、すり抜け事例が増加することは否めませんが、世界的に規制が撤廃されつつある状況でも大きな流行に至っていないことからすれば、新たな変異株の出現やその動向を注視しながら、さらにグローバル化に向けて緩和が進むと思われます。

この状況でおさえておきたいのは、人の往来で海外から持ち込まれる感染症(輸入感染症)は、当たり前ですがCOVID-19だけではないことです。これまで長期間にわたり渡航者数が限られていたことで、報告事例が激減していた輸入感染症が今後散見されてくることが予想されます。現在最も懸念されているCOVID-19以外の輸入感染症と言えばサル痘であると思いますが、6月末現在で欧米を中心に4000例を超える報告があり、一部はアジア地域にも飛び火しています2)。また、南半球では季節性インフルエンザが流行の兆しを見せており、それが原因なのかはわかりませんが、この時期としては珍しく都内の学校で学級閉鎖がありました3)。実際に発熱している帰国者の鑑別に季節性インフルエンザは重要です4)。さらに、シンガポールではデング熱の発生件数が過去最大を記録した2020年よりも早いペースで増加しており、現地では注意喚起が発令されています5)

海外から帰国した有病者の診療においては、問診が診断への重要な手がかりとなります。特に「滞在地」「曝露歴(現地で何をしたのか)」をふまえた上で「潜伏期」を考慮して、鑑別疾患を挙げていきます。インバウンドの回復にはまだ時間がかかると思われますが、これから夏休みを迎えアウトバウンド(日本人渡航者)は確実に増加するでしょう。渡航歴のあるCOVID-19以外の発熱者診療における輸入感染症の可能性とその基礎知識を、再度見直しておくべき時期であると思います。

【文献】

1)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00209.html

2)https://www.cdc.gov/poxvirus/monkeypox/response/2022/world-map.html

3)https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2022/06/23/04.html

4)Mizuno Y, et al:Travel Med Infect Dis. 2009;7(5):296-300.

5)https://www.sg.emb-japan.go.jp/itpr_ja/dengue.html

水野泰孝(グローバルヘルスケアクリニック院長)[COVID-19][輸入感染症][水際対策]

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