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【識者の眼】「コロナとの共生に向けた予防と医療の体制整備」北村明彦

No.5125 (2022年07月16日発行) P.62

北村明彦 (八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)

登録日: 2022-06-30

最終更新日: 2022-06-30

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英国では、新型コロナウイルス感染症の規制が解除されてから4カ月が経過した。「オミクロン株」の重症化率が低いため風邪の扱いに近づいているらしく、無症状はもとより軽症でも検査を受けない人が増えているであろうことから、感染拡大の実態については統計上把握しにくい。しかし、以前のような医療現場の混乱は報道されていない。

わが国では、コロナに対する入院体制の整備が現在でも各地で進行中である。大阪府では、コロナ病床のさらなる確保を進めるとともに、コロナの受入経験のない病院でも自院患者でコロナが発生した場合は、無症状や軽症者については自院で管理するための病床を確保するよう要請している。また、高齢者に対しては、在宅医療や施設往診等により可能な限り在宅や施設での療養の継続を図るとともに、入院療養においては、症状が安定し入院が必要でなくなった場合には臨時の高齢者用医療施設や宿泊施設での療養に切り替える体制を構築した。

こうした医療体制の整備が進む中で、大阪府の6月21日時点での重症病床使用率は4.1%、軽症中等症病床使用率は14.9%と病床のキャパシティは一定程度確保されている。ただし、第6波では、わずか2カ月で患者数が急増し、コロナ病床、一般救急病床ともに逼迫したことを忘れてはならない。わが国の医療体制の現状をふまえ、コロナとの共生を図るためには、新規感染者を抑制する予防を今後とも軽視するべきではなく、そのための個人、職域、地域、国の防疫の取り組みの重要性は変わらない。大阪府において警戒される徴候は、最近1カ月間の新規陽性患者数の減少傾向の割には軽症中等症入院患者数が減っていないこと、および、感染拡大の兆候を探知するための見張り番指標である20、30代新規陽性者数の7日間移動平均前日比が、6月22日以降連続して1.0を超過していることである。

欧米に倣っての規制撤廃の声が挙がる中で、保健医療関係者は現時点では楽観できる状況にないことを改めて認識する必要がある。施政者には、わが国がこの2年余りで蓄積してきた感染予防のノウハウとモニタリング指標をもとに、コロナとの共生社会の構築を進めていただくことを願う。

北村明彦(八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)[新型コロナウイルス感染症]

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