株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「『行動制限』は必要ないのだろうが、接触機会を減らすことは重要」和田耕治

No.5127 (2022年07月30日発行) P.56

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2022-07-15

最終更新日: 2022-07-15

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

BA.5系統の出現により、今後日本で起こりえることについては、これまで以上に不確実性が増している。これまでは、諸外国での流行から国内で起こりえることを想定することができたが、今回は欧米での流行とほぼ同時期であり、病原性やワクチンの効果がどうなるかがわからない。

欧米では、ワクチン接種と大規模な流行を経験して厳しい状況を乗り越えてきたが、一方で多くの方が感染による免疫を獲得している。日本では、感染者数はまだまだ限定的であり、また、3回目のワクチン未接種の方が40歳以下を中心に半数程度おられる。

「現時点では行動制限は必要ない」という発言が相次いでいる。しかし、それは「まだ大丈夫」ということではない。

既に沖縄県は病床逼迫が起きているし、東京も感染拡大が始まっており、こうした際に「接触機会を減らす」ような呼びかけは必要である。高齢者はもちろんだが、基礎疾患のある人、そうした人と同居したり、仕事で接したりする人は、このような感染拡大局面では飲食や集まる機会を減らすことが強く勧められる。できることを増やしていくことは重要だが、感染拡大局面に入っている今は、もう一度感染対策を見直すことが重要である。

では、どういう状況であれば「行動制限」が必要となるのか。新型コロナウイルス感染症対策分科会の第7波に向けた緊急提言では、「様々な対策を行っても医療の逼迫が深刻になった場合には行動制限を含めた強い対策が必要となることもある」とされている。その判断はこれまでと同様に都道府県知事にある。また、市民への自主的な呼びかけもできることになっている。遅れることがないように必要な判断と対応が求められる。

まん延防止等重点措置などの行動制限の前にできることはたくさんある。特に自分を感染から守りたいと思っている人への情報発信は重要だ。感染拡大が始まっているこうした状態であれば、会食などは延期したほうが良い。お盆の帰省も、このペースでいくと非常に厳しい感染状況がありえるため、キャンセルや延期などができるか確認しておくことは必要だ。

既に感染拡大とともに接触機会を自主的に減らしている人は多いと期待はしている。「政府や都道府県が言ってくれないと職場などでも徹底できない」という事情は以前からも聞かれたが、それぞれで自ら状況を察知して行動する時代にもなってきている。それでも遅れる人がでないようにするためには、産業医や地域でのチャネルを通して警戒を呼びかける時期にある。

※2022年7月15日に執筆しました。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症 ]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top