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【識者の眼】「日本に求められるセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツの普及と向上」重見大介

No.5128 (2022年08月06日発行) P.62

重見大介 (株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)

登録日: 2022-07-25

最終更新日: 2022-07-25

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セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツという言葉があります。英語表記ではSexual and Reproductive Health and Rights(SRHR)であり、日本語では「性と生殖に関する健康と権利」と訳されます。国際連合における人権活動の中心となる機関である国連人権高等弁務官事務所(Office of the High Commissioner for Human Rights:OHCHR)は、SRHRを「達成できうる最高水準の身体的及び精神的な健康を享受する権利であり、すべての人に不可欠な要素」と説明しています1)

SRHRは4つの要素、つまり、セクシュアル・ヘルス(自分の「性」に関して健康的でいられている状態)、リプロダクティブ・ヘルス(「生殖」に関して健康的でいられている状態)、セクシュアル・ライツ(自分の「性」に関する権利)、リプロダクティブ・ライツ(自分の「生殖」に関する権利)から成ります。これらはそれぞれが関連を持ち、切り離すことはできません。

2022年7月15日に、日本産科婦人科学会より「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ普及推進宣言」が公開されました2)。宣言の中では、私たち産婦人科医は専門家としてSRHRを深く理解し、SRHRの普及と向上に積極的に関わることで、わが国の社会のジェンダー平等の達成に貢献しよう、という決意が書かれています。わが国のSRHRにおける課題は少なくなく、たとえば確実性の高い避妊法(経口避妊薬や子宮内避妊具など)が十分に普及していない、緊急避妊へのアクセスに不便さが多く費用も高い、多くの先進国で60%以上の接種率であるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種率が非常に低い、思春期のうちからかかりつけの産婦人科医を持つ人が少なく「若いうちから女性としての健康を自身で管理する」という意識や仕組みが社会全体としてまだ整っていない、ことなどが挙げられるでしょう。こうした課題に対し、産婦人科医同士の連携はもちろんのこと、他職種とも協力して立ち向かっていかねばなりません。

私自身も、有志の産婦人科医とともにSRHRの啓発や実現のために活動するプロジェクト「みんリプ みんなで知ろうSRHR」を今年7月19日に立ち上げました3)。5つの活動目標として、包括的性教育の推進・ユースクリニック設置、医薬連携による緊急避妊薬OTC化、思春期からのかかりつけ産婦人科推進、月経困難症治療・避妊薬の普及、更年期以降も健康で快適な生活の実現、を掲げています。他診療科や他職種の皆さまのご理解とご協力をいただければ幸いです。

【文献】

1)Office of the High Commissioner for Human Rights:Sexual and reproductive health and rights.

2)日本産科婦人科学会:『セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ普及推進宣言』について.https://www.jsog.or.jp/modules/news_m/index.php?content_id=1249

3)みんリプ  みんなで知ろうSRHR. https://minripsrhr.studio.site/

重見大介(株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)[SRHR]

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