No.5128 (2022年08月06日発行) P.58
和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)
登録日: 2022-07-26
最終更新日: 2022-07-27
濃厚接触者は、感染症法第44条の3にて、「感染を防止するための報告又は協力」を求めている。対象者は、新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(2021年11月29日版)に示されている(https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2559-cfeir/10800-covid19-02.html)。
濃厚接触者とは、感染者と濃厚に接触したことから、今後発症する可能性が高い者である。しかし、その可能性は条件によって異なる。特に可能性が高いのは、感染者と同居している者であり、二次感染が発生する割合は、世帯の4〜6割という報告がある。また、会食などに同席した場合もリスクが高い。これらの場合は感染を防止するために次のような協力が求められる。
1. 最終曝露日を0日とし、潜伏期間として想定される7日間はできるだけ外出や人と会う機会を最低限にする。感染を広げる可能性がある飲食の場面やスポーツ競技への参加などは避けていただく必要がある。一方で、生活必需品などの購入のために短時間、近くの施設に買い物に行くことなどは、症状がないのであれば、不織布マスクを装着した感染対策の上で行えるようにしていく必要がある。
2. 人と接触する場面では、不織布マスクを常時装着する。家庭内に感染者がいる場合には、同居家族全員がマスクをし、換気を徹底する。既に感染や発症している人は部屋を分けるなど隔離を最大限に行う。咽頭痛、咳、鼻水、発熱などの症状がないかを常に確認し、症状がでればすぐに検査や感染対策を強化する。
3. 抗原定性検査で2日目と3日目に2回続けて陰性を確認した場合、3日目に解除という考え方が政府より示された1)。しかしながら、4日目以降においても十分な感染対策、可能なら追加の検査を実施していただくことで、意図せず周囲を感染させるようなことを防ぐことができる。
事業所や施設、学校や幼稚園・保育園などにおいて「濃厚接触者」の対応を自主的に運用する場合、過剰な対応や必要以上に長期間の休みを求めるなど、不当な対応にならないように十分に配慮することも必要である。さらに、最終曝露から7日以降の復帰の際に検査を求めるようなこと(観察期間後の陰性確認)は行わないようにすべきである。
欠勤者の増加など社会への影響も明らかになる中で、改めて濃厚接触者の意義や目的を考えるべき時期にある。また、気づかずに濃厚接触して発症することがあるため、お互いに症状の有無を日々確認したい。
【文献】
1)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部:オミクロン株のBA.5系統への置き換わりを見据えた感染拡大に対応するための医療機関・保健所の負担軽減等について. 事務連絡. 令和4年7月22日.
和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]