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【識者の眼】「がん患者が早期から緩和ケアにアクセスできるために」天野慎介

天野慎介 (一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長)

登録日: 2022-08-05

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7月1日から2日まで神戸国際展示場にて、第27回日本緩和医療学会学術大会が盛会のうちに開催され、筆者もがん患者の立場から講演する機会をいただいた。久しぶりに現地出席して、「オンラインでは得られないものがある」と再認識した。その場に居合わせた人と講演の感想を語り合ったり、立ち話で得られたりする情報量がとても多いことに加え、緩和ケアに熱心に取り組む方々の「熱量」を直接感じられるのも素晴らしいと感じた。

そのような緩和ケアに関わる医療者の方々の「熱量」があり、緩和ケアは国のがん対策でも重点政策のひとつとされてきた一方で、国のがん対策推進基本計画の中間評価においては「身体的苦痛や精神心理的苦痛の緩和が十分に行われていないがん患者が 3〜4割ほどいる」とされる。筆者ががん患者会で患者さんやご家族の方々から相談で話を伺っていても、緩和ケア提供体制は整いつつあるものの、様々な障壁があって患者が緩和ケアに辿り着けていない実情があると感じる。

まず、がん治療に関わる医療者に起因する障壁がある。がん治療と並行して治療の初期段階から緩和ケアを十分に考慮するがん治療医もいる一方で、がん患者が身体の痛みを訴えても痛みへの対応が不十分であったり、「緩和ケアはまだ早い」と言って緩和ケアに関わる専門の医療者への紹介をしなかったりするがん治療医もいる。がん治療医と緩和ケアに関わる医師の「二人主治医制」の必要性も指摘されているが、実施されている医療機関は少なく、「緩和ケア外来」へのアクセスも容易ではない。

がん患者や家族に起因する障壁も根強い。2019年に実施された内閣府「がん対策・たばこ対策に関する世論調査」では、「緩和ケアを開始すべき時期」について「がんと診断されたときから」「がんの治療が始まったときから」と回答した人は7割を超えているが、実際にがん患者や家族の相談に応じている際に緩和ケアを受けてはどうかと提案すると、「もう治療を諦めろということですか」などとその場で怒り出す人もいる。

緩和ケアに関する啓発は医療者にも患者にも必要と感じるが、行政サービスにおいて従来の「プル型給付」(給付対象者からの申請が必要)から「プッシュ型給付」(申請不要、対象者に行政から通知)への転換が求められているように、緩和ケアにおいても患者や家族の訴えを待つだけではなく、「プッシュ型」の医療や支援が求められているように思う。

天野慎介(一般社団法人全国がん患者団体連合会理事長)[がん治療][緩和ケア]

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