No.5144 (2022年11月26日発行) P.56
神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)
登録日: 2022-10-28
最終更新日: 2022-10-28
5月に開催された経済財政諮問会議で取りまとめられた「経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針2022)」で、今後の医療ニーズやコロナ禍で顕在化した課題をふまえ、「かかりつけ医機能が発揮される制度整備」に取り組む方針が明記された。
また、昨年5月に成立した改正医療法、そして本年4月の診療報酬改定において外来機能報告、外来機能分化の方向性で規定された「紹介受診重点医療機関」の議論では、「紹介受診重点医療機関ではない」医療機関として、「かかりつけ医機能を担う医療機関」が明記されている。紹介受診重点医療機関が、手術、化学療法、放射線療法や高額医療機器を用いた検査など、より専門的な医療を担うとすれば、医療費は出来高で算定せねばならない。一方、そうでない医療機関は、日常診療やスクリーニング検査を担うとなると、医療費は包括や人頭払いとなるに違いない。財務省的に、この出来高と包括に分けることで、後者の医療費を抑制させようとする意志が見え隠れする。
第8次医療計画の取りまとめを見据え、この「かかりつけ医機能」について近く、政府案や医療団体からの提言案が出される予定のようだ。ここで、先の財務省的考えにとらわれず、「かかりつけ医」「かかりつけ医機能」のあるべき姿を私見として問うてみたい。筆者は2013年の日医・四病協合同提言策定に関わった。それからほぼ10年が経過し、環境も変化した。これにこだわる時期ではないだろうと強く思う。
かかりつけ医とは、患者が決めるものであり、それ以上の何者でもない。難病や希少疾患患者にとっては大病院の専門医もかかりつけ医になりうるだろう。
かかりつけ医機能とは、医療提供側が規定するものだろう。自らの守備範囲を規定し、その範囲を超えるものに関しては相談・連携先を明示する。そこでは、高齢社会に臨み、医療だけではなく、在宅、介護や福祉など地域包括ケアとしての連携も明示すべきと考える。
そして、これまで診療報酬は「療養に対する給付」であったが、かかりつけ医やかかりつけ機能医療機関では、「相談」に対する給付を設定することが必要だ。これにより真の「何でも相談できるかかりつけ」となるのではないだろうか。
神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[「相談」に対する給付]