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【識者の眼】「第32回国民の健康会議を終えて」邉見公雄

No.5145 (2022年12月03日発行) P.59

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2022-11-24

最終更新日: 2022-11-24

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去る10月27日『第32回国民の健康会議』が開催された。主催の全国公私病院連盟は、診療報酬改定の説明会や病院運営実態分析調査など玄人向けの事業は有名であるが、日本医師会などと比べ国民の認知度は低い。そのため、一般の方向けに病院や医療人の本音を聞いて頂いたり、病院の多職種によるチーム医療、予防の重要性、医療と介護の連携などをテーマに開催していたものである。

今回のテーマは「コロナでみえた医療の課題」。総合司会は私と、同じく32回の会議に皆勤している行天良雄先生。医療評論のとなったNHK医療解説の大御所らしい見事な采配。

第1部は5人の演者による講演であった。最初は、群馬県沼田市で慢性期を中心に認知症や障害者など弱者にやさしい地域づくりのリーダー、大誠会内田病院理事長の田中志子先生。車椅子でも入れる温泉、障害者の働くリンゴ園やわんぱく広場。地域に仕事をつくり、人を集めるコミュニティセンターとして街づくりの実践を話された。

2人目は兵庫県看護協会会長の成田康子先生。県内の病院におけるクラスターの状況をアンケート調査。多くの病院がクラスターにより職員が休み、病棟閉鎖や面会禁止。患者の家族から「病院はプロなのに何でクラスターが出るのか」など心が折れるトラブルなど現場でのご苦労を発表された。

3人目は、全国自治体病院協議会薬剤部会長の室井延之先生。ロボットによる調剤や副作用モニタリング、入退院支援、処方提案など神戸市立中央市民病院での先進的な業務をご紹介頂いた。

4人目は大阪府歯科医師会会長の深田拓司先生。クラスターゼロの歯科。日頃からの感染症対策に加えSIRS、MERSの経験により更なる対策の強化。大阪府歯科医師会による夜間救急診療所、歯周ポケットやオーラルフレイルの解説などの取り組みも。人生百年時代。噛み、嚥み込み、喋る生活を守る歯科の大切さを主張された。

ラストバッターは、元東京大学胸部外科教授で賛育会病院長の髙本眞一先生のお話。米国では肺を主病巣とする若い重症者340例を肺移植。日本では京都大学の1例のみ。脳死や心臓死でも細胞は生きており、火葬は良くないのでは、とも。そして医療の根本は、患者のために患者との「共生」と。

第2部のパネルディスカッションの後には意見交換も行われたが、ウクライナ侵略のような時の医療はどうなるの、との問いかけが心に残った。全体の自己採点は大甘で90点。

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[新型コロナウイルス感染症]

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