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【識者の眼】「サポート希求の男女差」山本晴義

No.5148 (2022年12月24日発行) P.58

山本晴義 (労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)

登録日: 2022-11-28

最終更新日: 2022-11-28

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男性の悩み相談を受け付ける自治体の窓口が増えつつあるという。内閣府のまとめでは37都道府県に79箇所あり、10年前から2倍に増えている。弱音を吐いたり相談したりすることに抵抗を感じる男性は依然として多い。成長する過程で「男は強く」と言われて育つことが多く、そのことが原因のひとつにはあると思う。特に、中高年の男性は相談が苦手である。家庭でも職場でもそれなりの立場があり、それに自分から縛られてしまい、不調に気が付いていても、自分の能力不足だと考えたり、プライドから周囲に気軽に相談できないままこじらせてしまうことが多い。

しかし、うつ病になりやすいのは女性だと言われている。一般的に、女性は男性に比べてもともとセロトニンの分泌量が少なく、月経周期に減少すること、加えて出産などホルモンバランスが崩れやすくなる要因が多いからだ。では、うつ病に女性がかかりやすいならば、うつ病が大きな原因と言われている自殺も女性のほうが多いのだろうか。この答えはNOである。全国の自殺者数は、2020年は2万1081人で、そのうち男性が1万4055人で全体の7割弱を占めている。実に女性の約2倍であり、この傾向は警察庁の統計が確認できる1987年以降、基本的には変わらない。

では、なぜこうした矛盾とも思われることが起きるのだろうか。1つには先ほどから述べている、相談が苦手な男性の傾向が関与していると思われる。厚労省の「自殺対策に関する意識調査」によると、「悩みやストレスを感じたときに誰かに相談したり、助けを求めることにためらいを感じるか」という質問に対して、「そう思う」「どちらかというとそう思う」と回答したのは女性35%、男性43%だった。同時に、その傾向は50代の男性で顕著だったという。また、人に悩みを聞いてもらうだけで気持ちがすっきりするという経験の不足も関係している可能性がある。

ストレスを感じたり弱音を吐いてもいいのだという認識をまず持ち、相談することと男性らしさはまったく別物であることにも気が付いてほしい。そして、苦しい状況から脱する1つの手段として、相談をぜひ活用してほしい。

山本晴義(労働者健康安全機構横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長)[悩み相談][うつ病]

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