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【識者の眼】「学会総会の会長の一喜一憂」野村幸世

No.5148 (2022年12月24日発行) P.59

野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)

登録日: 2022-11-30

最終更新日: 2022-11-30

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先日、第33回日本消化器癌発生学会総会の会長をやらせて頂いた。この学会は、私が研修医1年目の時に、当時の私が所属していた東京大学医学部附属病院分院第三外科教授であった大原毅先生が創設した学会である。当時、多くの外科が「女はいらない」と豪語していた時代に喜んで受け入れてくれた教授である。そして、臨床医で基礎研究も行っている医師の研究成果の発表の場所であり、会員としては外科医が多いという、まさに私のような仕事の仕方をしている医師のための学会である。私はこの学会とともに医師生活を歩んできたと言っても過言ではない。だから、この学会の会長をやらせて頂くことは私にとって多くの意義のあることであったと思っている。

さて、そのような理由と経緯から、会長をやらせて頂いたことは本当に嬉しく思っているし、私に会長をやらせてくださった先生方には深く感謝をしている。しかし、学会の会長をやるというのはなかなか労力と時間のいる仕事でもある。まず、巨大な学会総会は別として、多くの学会総会はまず、資金集めをしなくてはならない。学会開催のための政府系資金が十分あるわけではなく、この国では多くの場合、製薬企業などにお願いをして、学会中のセミナーの開催などに参画して頂いたり、寄付を募ったりする。次に、演題を会員が応募してくれるか、そして、学会当日には多くの会員が参加してくれるか、と人頼みの仕事が続く。これらの結果により、会長としては内心、一喜一憂する。

学会総会の会長のご経験のある先輩から聞いた話によれば、このように大変な学会総会会長であるが、多くの業界で名を馳せている先生は、学会総会の会長をやりたがるものなのだそうだ。私はこの話を初めて聞いた時、正直、意外であった。このような医師としての日常診療や研究以外の仕事をやりたい先生が多いことに驚くと同時に、未だにその理由がわからない。学問の方向性を決めるものだからだろうか。ただ、昨今、大きな学会総会でもプログラム委員会なるもので主題などは決めるので、あまり会長一人の手に委ねられているわけではないと思う。

自分が行った学会総会当日は、とにかく、いらしてくれた参加者が参加して愉快で、有意義であるように努めたつもりである。言わば、わが家にお客さんをお迎えした時のようであった。参加者の皆様のいい思い出になったことを願っているが、やはり、今でも、学会総会の会長をやりたい先生が多い理由がわからない。

野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[第33回日本消化器癌発生学会総会]

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