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【識者の眼】「臨床研究③─臨床研究を実践する上での多職種連携の重要性」西﨑祐史

No.5151 (2023年01月14日発行) P.62

西﨑祐史 (順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)

登録日: 2022-12-22

最終更新日: 2022-12-22

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臨床研究の質を高めるためには、臨床研究支援者と研究者との円滑なコミュニケーションが重要である。今回は臨床研究コーディネーター(clinical research coordinator:CRC)や研究事務局スタッフの積極的な関与が、臨床研究の質向上に貢献した事例を紹介する。

臨床研究を進める過程で、患者登録の遅れは致命的である。患者登録数が、サンプルサイズ計算に基づいた目標症例数に到達しない場合には、研究結果の信頼性および科学性の確保が損なわれてしまう。研究に参加してくれた患者の倫理面からも、患者登録は遅滞なく円滑に進める必要がある。患者登録に影響を与える因子があらかじめ分かっていれば、患者登録促進のための工夫を講じることができ、目標症例数登録達成率の向上に繋がる。

そこで私達は、実際に臨床研究の支援を担当した、多施設共同前向きコホート研究のデータを活用し、患者登録に関連する因子を検討した。対象施設数は日本全国の106施設で、研究事務局スタッフが施設訪問し研究に関する説明会を実施した場合は、施設訪問しなかった研究参加施設と比べて、患者登録率が有意に高かった(38.9% vs. 11.8%、P値<0.01)。また、CRCが本研究を支援している場合は、支援していない場合と比べて、患者登録率が高かった(41.7% vs. 11.8%、P値<0.01)。さらに、都会よりも田舎の病院で、患者登録率が有意に高かった。

多変量解析で評価すると、患者登録と統計学的に有意に関連する因子は、施設訪問(オッズ比:4.54、95%信頼区間:1.31〜15.7、P値=0.01)、CRCによる支援(オッズ比:5.02、95%信頼区間:1.49〜16.8、P値<0.01)、都会(オッズ比:0.33、95%信頼区間:0.12〜0.86、P値=0.02)であった。一方で、病床数や病院種別(大学病院または市中病院)は患者登録と関連を認めなかった1)

研究事務局スタッフによる施設訪問や、研究施設におけるCRCによる支援は、臨床研究における患者登録の促進因子として重要である。CRCは、医療機関において、研究に関わる事務的業務、業務を行うチーム内の調整等を中心に研究者(医師)のサポートを行う。患者同意説明補助や患者データのEDC(electronic data capture)入力等を通じて、患者登録が促進されたと考えられる。また、研究事務局スタッフの施設訪問に関しては、メールや電話だけでは伝わりきらない、研究チームの熱意が研究参加施設に伝わり、患者登録が促進されたと考えられる。

さらに、田舎に位置する施設のほうが、都会に位置する施設よりも患者登録が促進されたという結果が得られた点も大変興味深い。この理由については明確な答えは持ち合わせていないが、田舎に位置する施設のほうが、ジェネラリストが多い傾向にあるため、患者に関する情報が1人の医師に集まりやすく、患者登録の取りこぼしが少ないのかもしれない。

【文献】

1)Ueda R, et al:Front Pharmacol. 2021;12:753067.

西﨑祐史(順天堂大学医学部医学教育研究室先任准教授)[臨床研究][臨床研究支援][総合診療]

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