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【識者の眼】「札幌市保健所におけるCOVID-19患者の健康観察業務を担うスタッフに感謝する」西條政幸

No.5151 (2023年01月14日発行) P.61

西條政幸 (札幌市保健福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)

登録日: 2022-12-23

最終更新日: 2022-12-23

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本連載を担当し、区切りとなる12回目の本稿では、札幌市保健所で日々新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の自宅療養者や施設療養者の健康観察を担当している保健師・看護師の皆さんの業務内容について紹介したい。

地域のCOVID-19流行対策は、ワクチン接種体制の整備や疫学調査、患者入院調整、在宅医療の提供など、多岐にわたる業務の積み重ねと連携からなっている。入院調整は地域でのCOVID-19流行対策の重要な業務のひとつである。これまで札幌市ではCOVID-19流行が小さくなった一時期を除いては、COVID-19患者の入院可能病床は常態的に十分な状況ではない。そのため、札幌市保健所では医師職が各患者の入院の適否を判断しているのだが、どうしてもその基準は厳しくならざるをえない。

保健師・看護師の皆さんは、病状や経過、生活様式、基礎疾患の種類とその重症度等々、患者について詳しく電話等で聞き取る必要がある。彼らは、電話等を通じて直接患者や介護者に耳を傾け、不安や不満、時には怒りの思いを受け止めることが求められる。きわめて専門性が高い仕事であると同時に、患者や家族、介護者の思いに配慮する心と聞く力が求められる。入院調整の適否の判断に誤りがあれば医師職の私たちに意見して下さる。

先日、ある基礎疾患を有する患者が、COVID-19陽性となった。その基礎疾患の特徴故、入院調整がとても困難であったため、私は自宅で療養すると判断したが、担当したスタッフが、なんとしても入院調整すべきではないか、と私に助言して下さった。独居の認知症・徘徊のある高齢者がCOVID-19陽性となった時は、受け入れ医療機関を探すことができず、苦渋の判断で自宅療養の判断をせざるをえなかった。担当したスタッフの心配は計り知れなかっただろう。患者やその患者に関わる方々から、時に心ない言葉を浴びせられることもあり、心に強い負担を感じ、一方で患者とのやりとりの中で喜びを感じる機会も多々ある。

入院調整担当の看護師・保健師だけでなく、COVID-19患者に初めて連絡をとるチームのスタッフも同様の思いで仕事を担当している。私たちが入院調整の判断をすると、皆一様に「ありがとうございました」と述べる。患者サイドに立脚して仕事をしていることの証である。毎日、このようなスタッフとCOVID-19流行対策にあたっている。

札幌市だけでなく各地域におけるCOVID-19流行対策は、このような活動の積み重ねであると思う。連載の区切りとなる本稿を通じて、私は私の周りでCOVID-19流行対策にあたっているスタッフに感謝の気持ちを伝えたい。

西條政幸(札幌市保健福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)[新型コロナウイルス感染症]

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