No.5155 (2023年02月11日発行) P.63
横山彰仁 (高知大学呼吸器・アレルギー内科学教授)
登録日: 2023-02-02
最終更新日: 2023-02-02
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5類になったからといって、もちろんウイルス自体が変わるわけではない。市中で軽症感染者がいくら出てもよいが、現状でも問題になるのは感染が命取りになる可能性のある弱者だ。彼らがいる病院や高齢者施設などでは、標準的な感染防御や陽性者の隔離など、厳格に行っている。これらの施設では5類になっても関係なく、マスク着用はもちろん、従来通りの感染対策が必要だ。SARS-CoV-2と季節性インフルエンザウイルスの病原性が同等だとしても、前者ははるかに感染力が強く、より厳格な対策が必要となっている。
今後、コロナ患者はどこでも受診でき、幅広い医療機関でCOVID-19の入院を受けることが期待されている。しかし、これまで受け入れられなかった施設が5類になったからといって、すぐ受け入れ可能となるかは疑問だ。これまで感染連鎖を防ぐ対策が十分できなかった施設が受け入れるには、やはりハードルが高い。また、施設の面会はこれまでの経験を生かして抗原検査やWebなどを併用してできるだけ可能にすべきと考えるが、今後も流行状況によっては制限されるのは避けられない。
現在、病院ではコロナ病床を設け診療にあたっているが、コロナ病床の維持には空床補償が必須である。コロナ患者を受けない方が病院にとってはメリットが大きく、補償がなくなれば隔離病床を設ける医療機関はなくなるかもしれない。隔離病床がなくなれば中等症・重症患者も入院できず、自宅で療養することになる。したがって、流行時には行政による病床確保が望ましく、各施設の入院数や空床数を毎日Web等でオープンにしてバラマキにならないよう適切な補償を行い、コロナ病床を維持することが重要だ。
また、保健所が行っている入退院調整がなくなる際には、保健所の機能を代替えできるシステムを自治体あるいは医師会などが用意すべきだ。例えばオンライン診療の推進とかかりつけ医機能のテストを兼ね、オンライン診療が可能なかかりつけ医に、実際の診察もスムーズに行える近隣にゆるやかな担当地域を定めて、運用する。このような試験的な取り組みを、段階的でも不完全でもできる地域から始めてはどうだろうか。現時点ではコロナ診療に限った話だが、そのようなかかりつけ医が司令塔となって、ゲートキーパーの役割を果たす。コロナ禍は医療体制を変える大きなチャンスだったはずで、こうした取り組みを行政と協力して地域ごとに構築できないものだろうか。
横山彰仁(高知大学呼吸器・アレルギー内科学教授)[新型コロナウイルス感染症]