ChatGPTが流行りである。オープンソースのAIを駆使したチャットサービスで、日本語も使用できる。2021年末までのネット上のデータを使って学習したAIが様々な質問や要望に応えてくれる。みなさんもぜひ一度お試しいただきたい1)。
何か質問するとChatGPTはすぐに答えを教えてくれる。日本語も流暢でしっかりした回答に見える。が、実はChatGPTの答えはしばしばデタラメ。試しに「岩田健太郎って何者?」と聞いたら、任天堂で活躍して最近死去した人、と答えてきた。とんだ、デタラメ野郎である、ChatGPT。お前はショーンKか?
まあ、コロナの時代にはもっともらしいデタラメばかりを言う「自称」感染症に詳しい人があちこちのメディアに出ていい加減なことを吹聴し続けてきた。医師でもそういうChat
GPT野郎に騙されて闇落ちした人は多い。みなさんは大丈夫ですか?
ところで、我々医療の世界にも「もっともらしいんだけど妥当性に乏しい」領域は多い。例えば、「疑い」病名だ。保険診療上仕方がないから書いているが、本当に疑っているわけではない。例えば、移植後の患者やHIV感染者では予防接種の是非を確認するため、麻疹やB型肝炎などの抗体を測定するが、別にこれらの疾患を「疑っている」わけではない。保険を通すための方便に過ぎない。
しかし、「病名」が科学的妥当性を欠くのは大問題だ。保険を通すのが病名登録の目的ではない。まだまだ日本は電子カルテのデータを臨床研究にアプライする「仕組み」が乏しいが、疫学研究や公衆衛生上、「正しい」診断名が即時的に収集、解析される仕組みは喫緊の課題である。というか、そういうシステムが完備されていれば、あのクソ煩わしい感染症法の紙書いてハンコ押してファックス、なブルシットジョブは消失するし(あんなクソ仕事、医師のやる仕事じゃない)、HER-SYSみたいな面倒くさい入力作業も不要になる。
保険診療を医師の手入力による「病名」に頼るのは時代遅れだと僕は思う。オーダーされた検査、処方された薬などからAIにより自動的に診療の妥当性が解析されればそれでよいはずだ。そもそもレセプト審査だって属人的にやっているから、審査員のリテラシーが低いと「外来で血液培養取ると査定する」なんて脅しをかけられる。やってられるか、といつも不満に思っている。
世界的に日本の電機メーカーは落ち目だが、電子カルテは日本企業製が多く、とても使いにくい。そろそろ世界を驚かせるイノベーションを日本から出せないものか。AIを駆使した電子カルテ、待ち望んでいる。
【文献】
1)OpenAI社公式サイト.
https://openai.com/blog/chatgpt/
岩田健太郎(神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)[診療情報のAI化][疑い病名][電子カルテ]