3年ぶりに中野区で開催された「第15回全国都市改善改革実践事例発表会」1)では、全国各地域で選抜された17自治体の業務改善優秀事例が報告された。
その内容は、庶務事務の一括委託化、観光情報の多言語化、給食メニューのインスタ発信、生活保護申請に係る定型書類作成のロボティックプロセスオートメーション(robotic process automation: RPA)化、ドライブスルー方式による狂犬病ワクチン集団接種など、多種多様であったが、中でも、各種書類発行申請・定期便乗船券購入・施設利用予約といった受付手続きに係るDXの取組が多かった。
確かに自治体レベルのDXとして、役所業務の典型である窓口業務の電子申請化は一番手っ取り早い。筆者の所属する保健所においてもDX担当が配置され、感染症対策業務については新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の療養証明書の発行依頼だけでなく、HIV検査の申込や、予防接種予診票の再交付申請等を電子申請化したところである。
もちろんデジタル弱者への配慮は必要であるが、本人確認が必要なものについてはマイナンバー認証の活用、手数料など支払いが発生するものについてはそのためのプラットホームを整備していく等により、より活用範囲が広がり、利便性の向上が期待される。保健所の生活衛生課が所管する許認可業務の申請についても、DXが進めば窓口対応が減る分、現場の訪問調査や監視指導に時間をかけられるようになることが見込まれる。
筆者が足しげく通う映画館も、名画座を含めほとんどがオンラインでチケット購入可能となって久しい。子どもの頃、チケット売り場に並ぶのが嫌いな父に連れられ、早起きして朝一番の回を観に行ったのが懐かしい。
このような工夫はCOVID-19の流行で三密を避けた対面対応が制限される中で生み出された業務改善の一環だったのかもしれないが、今後の少子高齢化を踏まえた労働人口減少にも即した対応である。国の審議会がYouTube配信されるようになり、健康観察がオンライン入力となり、疫学調査票が電子ファイルになって、コールセンターにはクラウド電話が導入された今、保健所から関係機関への情報提供についてもDXを進めており、医療機関等から「メールはないのでFAXで送って」と言われることがなくなる日も近いと信じている。
【文献】
1)中野区公式サイト:第15回全国都市改善改革実践事例発表会.
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/154500/d034113.html
関なおみ(東京都特別区保健所感染症対策課長、医師)[DX][電子申請][ペーパーレス化][脱FAX]