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【識者の眼】「フリーアクセスの合理的ルール」島田和幸

No.5195 (2023年11月18日発行) P.60

島田和幸 (地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)

登録日: 2023-11-01

最終更新日: 2023-11-01

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新小山市民病院は、300床の地域医療支援病院である。国・県が示す「紹介受診重点医療機関」として、今年7月、県のホームページにリストアップされた。ところで本院の外来患者数は現在1日平均750人と過剰である。しかも、1日外来診療単価が1500円未満の患者さんが全体の20%を占めている。これらは、診察と処方のみの受診であり、当院がいわば“かかりつけ”である。しかし、これらの患者さんの診療費は、外来収入全体の1.5%にすぎない。本院が地域医療構想に則って本来の役割である入院医療に重点的に対応するためには、外来診療の適正化は“待ったなし”の状況である。

「紹介受診重点医療機関」に相対するのが「かかりつけ医」である。医療政策上、双方が役割・機能を分担して、効率的な医療体制を構築しようとする議論が長年続いている。しかし、現実的にどう具体化するかは、フリーアクセスの大義に阻まれ迷走を続けている。本院の現状は、まさに「かかりつけ医」の落としどころを見出せないわが国の実態をそのまま反映している。

そもそも、医療政策上で「かかりつけ医機能」が強調されるのは、医療資源の効率的運用を目的としている。すなわち現在の医療提供体制が費用対効果に劣っているという判断である。根拠を示して現在の医療の“無駄”を説かない限り、施設要件や診療報酬をいくらいじっても、国民皆保険の各ステークホルダー同士の綱引きに終始するばかりである。フリーアクセスの下で合理的ルールに従わなければ、現在の医療システムは維持できない。

様々な病態を呈する患者に、検査、診断、治療、フォローアップなど、現実の各医療機関が連携して、どのように進めるのが最も合理的か? 各領域の学会(アカデミア)は、社会経済的な視点をも加えて世に提唱すべきではないか。機能分担した1〜3次の各医療機関が、これらの指針を共有すれば、それぞれがやるべきこととやるべきでないことが明確となる。患者は、どの医療機関を受診しても標準的な医療を受けられる。アカデミアは、自らが創出する医学が、医療として現実の世界でどのように行われるかということに対しても、もっと関わるべきではないか。

島田和幸(地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)[紹介受診重点医療機関][かかりつけ医][学会]

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