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【識者の眼】「後発品安定供給のためには、供給量だけでなく企業の技術力の評価も」坂巻弘之

No.5214 (2024年03月30日発行) P.62

坂巻弘之 (神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)

登録日: 2024-03-07

最終更新日: 2024-03-07

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2024(令和6)年度薬価制度改革は、2023年6月に公表された「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」報告書を受けて「ドラッグ・ラグ/ロスの解消」と「安定供給確保」が大きなテーマであった。このうち新薬のドラッグロス等については、「迅速導入加算」の新設や、新薬創出加算の見直しなどが行われることになった。一方で、後発品を中心とした安定確保のための対応については、価格下支え制度の充実に加え、新たに後発医薬品企業の供給体制を評価し、それを薬価に反映する新たな仕組みが導入されることになった点が注目される。

安定確保に関わる評価指標案をみると、安定供給体制や供給実績について「後発品の安定供給のための予備対応力の確保」「製造販売する後発品の供給実績」に加え、「薬価の乖離状況」も評価されることとなっている。薬価については、企業が価格面から安定供給にどのように対応しているかを評価するもので新規性がある。安定供給体制や供給実績については、大まかには、製造能力または在庫量、過去の出荷実績など、いずれも数量を中心に評価する仕組みである。これらの項目に対する評価方法についての詳細は検討段階と思われるが、企業によってはあらかじめ出荷量を少なく申告するなどのモラルハザードが生ずる可能性も考えられ、具体的な評価方法の設定についてはさらなる検討が必要と考えられる。

今回の安定確保への薬価上の対応は、出荷量にフォーカスした企業評価であるが、これまでも本稿で繰り返し指摘してきたように、出荷量が需要を賄えない状況を生み出している本来の原因は、品質不良や製造プロセスの実態との乖離である。さらにこれらの問題の本質は、市場の伸びに対して大量製造するための技術力が欠如しているために品質・製造問題につながっていることにある。こうした問題への指摘に対して、厚生労働省からの要請により、来年度以降、全後発品メーカーで品質、製造に関わる新たな自主点検を行うこととなった。自主点検の内容や手順もこれから作成されることになっているが、問題の根幹である各企業の技術力の点検も必要である。

いずれにしても、今回の後発医薬品の安定確保が薬価制度改革に盛り込まれたことは一定の前進があったと言える。この改革によって供給不足改善につながるかどうかの供給状況のモニタリングが行われることになっている。モニタリングにおいては企業の供給量だけでなく、技術力の評価も盛り込まれることが望まれる。

坂巻弘之(神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科教授)[薬価][後発品安定供給]

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