No.5214 (2024年03月30日発行) P.60
守上佳樹 (よしき往診クリニック院長、一般社団法人KISA2隊OYAKATA)
登録日: 2024-03-08
最終更新日: 2024-03-07
時代は令和に入り、医療の「大転換期の大詰め」を迎えている。このような時代の全体思考の一助になればと考え、コメントを提供したい。
団塊の世代が全員後期高齢者となる2025年までの政策の1つとして、「地域包括ケア」が登場した。「地域包括ケアシステム」という用語にもなるため、大きな枠組みのシステムがあり、そのシステムに則って動いていけば、全国の医療介護ケアが包括的に地域で格差少なく達成されるような印象を持つ。しかし真意はその逆である。
日本の都道府県、また二次医療圏はそれぞれバックグラウンドが異なるため、全国一律に適用されるような画一的なプログラムは作成できない。「地域包括ケア」とは、そう割り切って各地に権限移譲を行い、逆に各地の責任と思考で最適なケアシステムを考えてほしい─そういう動きと理解し、対応するべきである。
すべての地域で均一な医療サービスを安価で受けることができるよう、戦後の医療システムが「全国どこでも同様に」という概念で推し進められてきたのに対して、高齢化が進んだ現在、「各地域すべて異なるのが当然」という総合的なケアシステムを、各地域のメンバーで、各地域の責任で、つくっていくことが求められている。
地域が異なれば、その人口分布も、人口動態も、気温や湿度も、地政学的な特徴も、男女比率も、食べているものも、思考の方法も、納得の仕方も、すべてが異なる。このことを大前提に置き、ただ目標目的は総合的に「包括」してそれぞれの地域で最善と思われるケアを提供するような体制をそれぞれの地域でとることができるように、各地域内で議論し、協力し合って、せまりくる2025年以降の体制を構築していかねばならない。
つまり、「国が旗振りをし、どの地域にいても画一的な医療介護が享受できる」というイメージから、「わが地域の医療介護体制はわが地域で考え、構築し責任もとる」というイメージにマインドを変更していく必要がある。地域包括ケアシステム構想は、各地域の構築に自由度が認められる反面、各地域が責任を取らなければならない。
令和時代の地域包括ケアシステムとは『各』地域包括ケアシステムとして認識したほうがよいと考えている。
前稿の「助言①」(No.5208)と合わせ、「『信頼できる』多職種連携」をもとに、「各」地域包括ケアシステムを構築していくこと、この感覚が令和時代の2025年を迎えるにあたり、地域医療を推進するために重要である。
守上佳樹(よしき往診クリニック院長、一般社団法人KISA2隊OYAKATA)[地域包括ケア][大転換期][チーム医療]