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【識者の眼】「医療DXの本質は?─見える化はDXではない、デジタル化は目的ではない」近藤博史

No.5220 (2024年05月11日発行) P.64

近藤博史 (日本遠隔医療学会会長、協立記念病院院長)

登録日: 2024-04-24

最終更新日: 2024-04-24

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医療DXの本質は何か。それは単なるIT化ではない。世界では書籍や音楽のコンテンツが電子化され、物の流通がコンテンツの配信になり、(利用者の満足度を上げ)市場や社会が大きく変貌したことをDXと呼んでいる。医療の分野も電子カルテによりコンテンツのデジタル化は始まっており、医療機関の数や形態が変貌するはずである。

EUのHorizon 2020の基金から、電子聴診器や耳鏡、眼底鏡などのmobile Health機器開発とIHE(integrating thehealthcare enterprise)の評価ソフト開発など「データ統合」に投資が行われた。mobile Healthはセンサーの小型化とスマホ接続によるcontinuous monitoring、デジタル治療、location free trialが言われている。これにより、歩数、脈拍、体温、酸素飽和度(SpO2)、血糖値が計測されつつある。血圧、体重、体脂肪率も自宅の計測機器からデータ取得ができ、食事の写真をスマホで撮影してアップすれば、食事量も概算できる。こうして入院しても計測されない情報が計測保存されはじめている。

スマホと連動しなくても、花粉量、黄砂の量、紫外線量も重要な診療情報になった。デジタル治療ではスマホを使って内服薬の量の調節、運動量、食事摂取の指示は可能である。手術や点滴治療はできないが、医療機関受診の指示はできる。将来的には体につけたインスリンや抗がん剤ポンプの注入量も制御できる。location free trialではインターネットやスマホを使って治験参加の募集から症例の確認、治験の実施を指示できる。スマホの常時接続性から治験患者の無為に対してモチベーションを与え、ドロップアウトを削減させる可能性がある。

上記は検査結果や行為指示の電子化と言える。これらは電子カルテで作成された診療情報と「統合」されて初めて統計処理がなされ、新たなエビデンスとして有効な治療をもたらす。人工知能利用も可能になる。

日本では情報をデジタル化して「見える化」すればよいとする話が多いが、「統合」しなければDXにならないと考える。コロナ禍での抗体検査、ワクチン接種、重症化患者リストはそれぞれサーバを立ち上げて「見える化」されたが、個人情報取得の壁等で統合はなされなかった。2010年の医療再生基金で、日本各地の地域連携システムは患者の関係する病院の診療情報を別々に「見える化」はしたが、「統合」はされず、検査や処方が1つの時系列に表示(personal healthcare record、PHR表示)できなかったので、別途PHRや次世代基盤法でのデータ収集がされるようになった。それも、複数組織が個別に収集する。

地域連携システムは医療機関の紹介時に見えるだけでよしとする人も多い。しかし検査の基準値(正常値)は多くの健康人からの数値であり、健診センターの個人の長期データから個人の正常値がわかり、早期に異常値への変化を予想できるという報告もある。投薬情報も、過去の副作用あるいは効果発現の程度がわかれば適量への調節も容易である。個人の過去の健診と診療のデータは、今後の診療計画に有益であり、同時に研究データとしても意義が大きい。英国では既に国の診療データは1つの社会資源として市場で扱われ、日本の製薬企業も購入している。北欧も類似の方向に動いている。

近藤博史(日本遠隔医療学会会長、協立記念病院院長)[mobile Health][location free trial][PHR]

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