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【識者の眼】「『かかりつけ医機能報告』制度は未来の地域医療を形づくるか?」松村真司

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2024-08-08

最終更新日: 2024-08-08

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2023年の医療法改正により、かかりつけ医機能が発揮される制度整備の一環として、①医療機能情報提供制度の刷新、②かかりつけ医機能報告の創設、③慢性疾患患者等に対する書面交付・説明の努力義務化が決定した。①については既に2024年4月に施行され、②と③については2025年4月施行の予定で準備が進められている。先般「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」(以下、分科会)において、これまでの議論をふまえた案が発表された。

それによると、特定機能病院・歯科医療機関を除く「すべての病院・診療所」は「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能(1号機能)」の有無について報告を行い、この1号機能を持つ医療機関は2号機能として「時間外の診療」「在宅医療対応」「介護連携」等に関し、報告が求められる。さらに、かかりつけ医機能を持つ医療機関は、一定期間(おおむね4カ月)以上継続的に医療の提供が見込まれる患者に対しては、文書等を用いた説明を行うことが求められるとのことである。

今後、文言調整が行われた上で、2025年のスタートに向けた具体案がより明らかになっていくということだが、準備期間は潤沢にあるわけではない。現場では2024年6月に行われた診療報酬改定に伴う諸作業がようやく落ち着いてきたところではあるが、今後予定される保険証のマイナンバーカードへの移行作業と時期が重なることもあり、現場に大きな負担を強いることも予想される。特に、2号機能については、地域で医療・介護の連携体制を構築する上で重要な情報となる。それをもとに「地域における協議の場」で具体策が検討されるとされ、医療機関においてどのような形の報告が必要になっていくかは注目に値する。

とりわけ複数の慢性疾患や障害を持つことが多い高齢者にとっては、多彩な症状に対応した上で、多職種・多施設にわたる連携・調整機能を切れ目なく行う医療機関を整備し、これらを「かかりつけ医」としていくことは望ましいことに違いない。ただし、論点整理の中でも指摘されているが、この制度は単なる「報告」にとどまらず、これらの機能が実装され、患者・住民とともに活用されることで、未来の地域医療を形づくっていくことが最終目標である。今後の議論の進展に注目したい。

【参考】

厚生労働省公式サイト:かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた議論の整理(案).
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001276177.pdf

松村真司(松村医院院長)[医療法改正][制度設計]

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