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【識者の眼】「かかりつけ医機能報告、その先にあるものは?」松村真司

No.5244 (2024年10月26日発行) P.62

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2024-10-08

最終更新日: 2024-10-08

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2025年4月から施行予定である「かかりつけ医機能報告制度」については、前回の本稿(No.5235)でも論じたが、今後の社会において、多彩な症状に対応した上で、多職種・多施設にわたる連携・調整機能を切れ目なく行う「かかりつけ医機能」を整備・強化していくことに異論を唱える余地は少ない。本稿ではこれらが施行されたのちに何が起こるのか、特に地域医療に携わる当事者として、私見を交えて論じてみたい。

このような「報告」がある程度正確に行われることになれば、現在は明確でない点が多くあいまいである、どの医療機関が専門診療を提供し、どの医療機関がかかりつけ医機能を提供するのかが明示的になる。ただし今回は自己申告を中心とした報告であり、また現段階でも、既に多くの地域医療機関がかかりつけ医機能をはたしていることを考慮すると、大きな混乱が生じる可能性は低いと考えられる。しかし、今後、精緻なデータに基づいた報告が求められるようになると、医療機関間の役割がさらに明確化される可能性がある。

また、報告制度に基づいて地域単位の「かかりつけ医機能」、いわゆる「面としてのかかりつけ医機能」も集計され、その充足度も見える化される。そのため、地域単位の基盤整備がきわめて重要になると思われるが、ここは大きな発展が見込まれる分野である。特に、世界に先駆けて高齢社会にあるわが国から、「かかりつけ医機能」を強化する様々なイノベーションが起こることを期待したい。

もっとも予測困難なものが、「慢性疾患患者等に対する書面交付・説明の努力義務化」による影響である。現段階では、おおむね4カ月以上継続的に医療の提供が見込まれる場合で、患者や家族から求めがあったとき、「治療に関する内容」および「当該患者に対して発揮するかかりつけ医機能」について書面交付・説明を行うこと、と提案されている。しかし、これらの書面交付・説明が現場に負担と混乱を与える可能性もある。一般への十分な周知はもちろんのこと、書面交付・説明は、なぜ導入されるのか、その目的について丁寧な説明が必要になるだろう。またそれと同時に、これらの影響がどのような結果をもたらすのか、事後の検証も欠かせない。

新制度発足まで、あと半年。長年の議論と、多くの人々の努力によってようやく形になった「かかりつけ医機能報告制度」である。この半年の間に、より多くの議論が行われ、多くの人々に歓迎されるような制度の発足を期待したい。

松村真司(松村医院院長)[かかりつけ医機能制度設計

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