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【識者の眼】「スウェーデンのヘルステック政策」渡部麻衣子

渡部麻衣子 (お茶の水女子大学ジェンダード・イノベーション研究所特任准教授)

登録日: 2025-01-17

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今、日本に帰国しています。日本は青い空に銀杏が美しい季節ですね。黄と青のコントラストがスウェーデンの旗のようです。さて、去る11月某日、スウェーデンのアンナ・テニエ高齢者・社会保健大臣と面談する機会を頂きました。とある会で自己紹介したところ、研究についてぜひ聞かせてほしいとおっしゃったことで実現したものです。テニエ大臣に許可を得ることができましたので、今回はこの面談について報告します。

実はテニエ大臣は、面談する直前の10月に来日し、国際福祉機器展で講演されたばかりでした。講演ではテクノロジーを使った認知症対策についてお話されたようですが、面談の席でも、高齢者の福祉にテクノロジーをどう活かしていくかが話題となりました。

日本と同様に、スウェーデンでも現在、介護人材の不足が社会課題となっています。在宅介護が基本のスウェーデンでは、人口密度の低い地方で特に、介護士の負担が重くなっています。テクノロジーを導入し、モニタリングや服薬管理等をアプリやロボットに担わせることで介護士の訪問回数を減らして、負担を軽減することができると期待されているのです。

また、離れて暮らすことの多い家族の安心にもつながります。介護を受ける側も、身体や脳をトレーニングしたり、活動範囲を広げたりすることにテクノロジーを使って健康寿命を延ばすことができる、とおっしゃっていましたが、これがスウェーデンのお家芸の1つであるコンピューターゲームの活用を想定したものであったかを聞きそびれたことが悔やまれます。世界中にファンのいるマインクラフトはスウェーデン発のゲームです。

さて、テクノロジーを導入する際に、女性と男性とでは導入の仕方が異なると思うかをお聞きしたところ、家庭へのテクノロジー導入では女性がキーパーソンになる、とのこと。女性は歳を重ねると、家族全体のマネージャーのような存在になることが多いことから、たとえば高齢者世帯にモニタリングサービスを導入しようとする場合は、女性が使いたいと思えることが大事だとのお答えを頂きました。スウェーデン国内のいくつかの自治体で、これら「ウェルフェア・テック」を導入するパイロットプログラムが走っていて、国としてもそれらの取り組みを財政的に支援しているとのことです。

医療福祉の課題とテクノロジーへの高い関心という2つの特徴が重なる両国は、人の性質も似ているとよく言われます。今後も様々な形で協力関係が育っていくといいですね。

渡部麻衣子(お茶の水女子大学ジェンダード・イノベーション研究所特任准教授)[テクノロジー][高齢者福祉]

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