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【識者の眼】「健康省エネ住宅の重要性~その②」今村 聡

今村 聡 (医療法人社団聡伸会今村医院院長)

登録日: 2025-02-26

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前稿(No.5261)にて住宅環境(ことに断熱性能)がいかに健康に影響するか、そして住宅の断熱性能の向上の重要性について記載した。

新築住宅、ことにマンションにおいては、現在の基準に基づいて建設がされているため断熱性能が向上している。一方、多くの既存住宅は断熱性能が劣悪なため、冬季に低温を、夏季に高温を生じ、健康に大きな悪影響(冬季の循環器・呼吸器疾患の増加、夏季の熱中症)を及ぼしていることは前稿で述べた通りである。

その上で、まずは住宅の断熱の重要性について、国民に知ってもらうことが重要である。厚生労働省は、地域包括ケアの推進を省是とし、望ましい住まいと住まいの方の上に、医療、介護その他のサービスが一体的に提供されるとしている。また、 “健康づくりネット”がホームページにアップされており、その中で室温と健康への影響、そして“室温見直しチェックシート”が記載され、室温を測定することの重要性をうたっている。

医師は日常診療において、自宅での血圧測定を働きかけることが多い。それと同様に居宅(長い間過ごす部屋、たとえば居間、寝室、そして浴室、トイレ等)に温度計を設置し、生活環境の室温を知ってもらうようにすることが重要である。国民には改めて、現在住んでいる住宅の寒さ、暑さが当たり前と思わず、それを改善することの意義を理解してもらう必要がある。

もし、WHOが勧告している冬季の室温18℃以上が保てていないようであれば、健康へのリスクの説明をし、患者自らができる取り組み(窓にプチプチを張る、カーテンを床まで垂らす、カーテンの上に洋服等をかけるなど)があることを伝えることもできる。ただ、このような取り組みだけでは十分な断熱が得られないことも多い。その際、断熱性能の改修が必要になることも多いと思われる。

前稿のごとく断熱性能の改修を行った住宅に関しては、血圧等様々な健康上のデータ改善が有意に認められている。従来、国土交通省そして環境省には、断熱性能の改修に関する補助金が用意されている。しかしながら、それらの制度が複雑であるため対象者に十分に活用されていないのも現実である。

また、住宅改修にかかる費用によって、あきらめざるをえないケースも多い。ことに家全体を改修するには、補助があっても大きな自己負担が必要となる。最近は、断熱と耐震を組み合わせ、シェルターのように安心して生活できる空間づくりのための、国・自治体で8割の補助をする一部屋改修の仕組みができた。次稿では引き続き、この取り組みに対する医療者、建築者、自治体の活動を紹介したい。

今村 聡(医療法人社団聡伸会今村医院院長)[生活環境][断熱地域包括ケア

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