「最近食事の際にむせやすくなった」「食事を飲み込みにくくなった」など、嚥下に関わる症状を訴えて耳鼻咽喉科クリニックを訪れる患者は少なくない。「くち」や「のど」を専門領域の1つとする耳鼻咽喉科クリニックでは、最近どのような診療が行われているのか、日本臨床耳鼻咽喉科医会(以下、臨床医会)で嚥下障害診療マニュアルの作成に関わった経験から、嚥下障害の診療を行っている耳鼻咽喉科クリニックでの現状について紹介したい。
まず、受付で「飲み込み」についての診療希望の申し出があれば、嚥下障害用の問診票に記入をして頂く。臨床医会が作成した診療マニュアルに掲載されている嚥下障害用の問診票が用いられることが多い。この問診票では、具体的な症状や病悩期間、食事の所要時間や体重減少の有無と嚥下後のむせなどを問い、嚥下障害の重症度が推測される。さらに患者の表情や応答と歩行の様子を観察し、口腔・中咽頭の視診や頸部触診を行った後に喉頭ファイバーで下咽頭や喉頭の診察を行い、神経筋疾患や咽喉頭の器質的および機能的疾患などが除外されていく。別日に内視鏡を用いた嚥下機能の検査(嚥下内視鏡検査:VE)が行われる。これは、唾液や着色水の咽頭残留、嚥下反射の惹起性および気道防御反射についてスコア化して評価する検査である。そのスコアの合計点を考慮し、この段階で専門病院や神経内科に紹介すべき患者の選別が行われる。
嚥下障害が軽度であり、自院で嚥下指導が可能と判断された場合には、食事中の環境整備や顎引き嚥下などの姿勢調整、食べ方や食形態の工夫などの嚥下指導が行われる。また、喉頭挙上が不良な患者には「嚥下おでこ体操」など喉頭挙上を促進する訓練の指導が行われる。
臨床医会では、耳鼻咽喉科クリニックにおいて上記の手順で診療を行うことを推奨しており、嚥下障害について対応できる耳鼻咽喉科クリニックは今後さらに増えていくと思われる。「飲み込み」について不安のある方はぜひ、お近くの耳鼻咽喉科クリニックで相談を行って頂きたい。
唐帆健浩(じんだい耳鼻咽喉科院長)[耳鼻咽喉科][摂食嚥下障害]