この4年間「地域医療の再興」をテーマに取り組んできた。そのために国民に信頼される医師ならびに医師会を目指し、“かかりつけ医”の存在が重要と主張してきた。
今期は地域医療構想が策定され、かかりつけ医が中心的役割を担う地域包括ケアシステムの仕上げに向かう。そこで、基本方針として、①かかりつけ医を中心とした「まちづくり」、②変革期を担う人材育成の視点に立った「人づくり」、③医療制度をリードし続ける強い医師会への「組織づくり」─の3点を掲げた。超高齢社会を乗り切る医療提供体制にはどれも不可欠な視点だ。医師を代表する専門家集団としての視点を持ち、しっかり取り組んでいきたい。
病気をした時にはすぐに相談でき、的確な情報を十分に提供してくれるような、地域に安心感を与える存在ではないか。また病気になる前の健康な時から住民の健康管理を積極的にサポートし、地域の健康増進に密接に関わっていくことも重要になるだろう。
会長になって1年目に医師会の基本姿勢として、医師の倫理観や使命感を重視する『日本医師会綱領』を定めた。我々の仕事は国民の健康・生命を守り、幸福に資するもの。そうした観点から2025年より先を見据え、国民の信頼を得られるような人材を育成する必要がある。医療の基本は医師と患者の信頼関係。高齢化により支え手が少なくなる中で医療のあり方も変わっていくが、患者に寄り添う医師の育成が求められている。
専門分野を深め、国民にさらなる安心を与えていくことは医師のプロフェッショナルオートノミーという視点からも重要。しかし、各学会から上がってきた研修プログラムでは、指導医や研修医が都市部の急性期病院に集中し、地域医療に大きな混乱を来す恐れがあり、地域医師会の先生方からも憂慮する声をたくさんいただいた。そこで2月の会見で「延期も視野に」と提言し、一度立ち止まった上での修正をお願いした。進んでいるものをストップさせる大きな決断だったが、色々な情報を整理し、私1人の判断で行った。
先般、松原謙二副会長が日本専門医機構の副理事長に就任した。延期といっても時間に猶予はない。若い人たちが長い間活躍できるような専門医の仕組みを構築するため、主張していきたい。
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