抗HIV薬の導入により、HIV感染者の予後は著しく改善した。仮に20歳で診断された場合、適切な治療を受ければさらに40年以上の生命予後が期待できる。しかし、診断時にすでにAIDSを発症している例では、今なお予後不良である。早期発見できれば抗HIV薬によりAIDS発症が予防できるため、医療費の抑制にも寄与する。さらには、治療によるウイルス量低下で2次感染が予防できる利点もある。
当科では、不明熱や原因不明の体重減少などの診察にあたるのみではなく、「感染症科」としての役割も受け持っている。ある日、20代の男性患者がニューモシスチス肺炎のため入院し、HIV抗体検査を行ったところ陽性であった。ベッドサイドで既往歴を問診すると、5年前に当科を受診したことがあると言う。その時は、伝染性単核球症と診断されたらしい。
発熱、リンパ節腫脹、異型リンパ球出現、肝機能障害などをきたす伝染性単核球症は、EBウイルスのほか、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス(HHV)-6、なども原因となり、HIVの急性感染でも引き起こされるため注意が必要である。当科で日本人成人の伝染性単核球症の原因ウイルスを検索したところ、3%はHIVによるものであった〔Naito T, et al:Intern Med. 2006;45(13):833-4〕。HIVに感染してすぐには抗体検査が陽性とならないため、「原因不明の伝染性単核球症」と診断され放置されていることも少なくない。この症例も、HIVスクリーニング検査のみを行って、4週間後の再検査が行われていなかった。
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