ジャズのトランペッターであるマイルス・デイヴィスのスタジオ・アルバム。モード・ジャズは1950年代後半に試行されはじめ、「カインド・オブ・ブルー」で完成した(CD:COLUMBIA/LEGACY、1997年発売)
高校1年の秋、私は父の仕事の関係で米国ボストンに滞在していた。意気揚々と高校に入学したまでは良かったが、ほとんど英語が話せぬまま友人もできず、鬱々とした日々を送っていた。
そんなある日、学校の音楽室の前を通りかかった。すると、何とも言えず切ないミュート・トランペットの音色が聞こえてきた。音に誘われるまま音楽室に入ると、音楽教師がレコードをかけていた。このアルバムこそ、ジャズの歴史を変えたマイルス・デイヴィスのスタジオ・アルバム「カインド・オブ・ブルー」であった。マイルスの口癖と言われていた“So What”という言葉をタイトルにした楽曲で始まる5曲入りのアルバムで、モード・ジャズを代表する名作アルバムである。マイルスのトランペットはもとより、マイルスをサポートしていたピアニスト、ビル・エバンスのリリカルなサウンドにノックアウトされた。
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