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女性肛門科医という看板を背負って [プラタナス]

No.4847 (2017年03月18日発行) P.3

山口トキコ (マリーゴールドクリニック院長)

登録日: 2017-03-17

最終更新日: 2017-03-16

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  • ある日の午後、1本の電話がかかってきた。その電話の主は79歳の女性患者であった。声に張りがあり元気そうだが、まだ入院中とのこと。お礼に行きたいが行けないので、まず電話で感謝の意を伝えたいというものだった。

    その患者が来院したのは3カ月前。腫瘍は臀部の右側から腟の入口まで広がっており、表面は落屑、びらん、色素沈着を認め、ごつごつとしていた。さらに膿のような臭いのある分泌物も出ていた。一見して悪そうな顔つきである。そして肛門に指を入れて診察しようとしたが、狭くて入らない。ということは直腸下部にも腫瘍が疑われる。私が肛門科医になって25年近く経つが、ここまで大きい腫瘍を見たのは初めてかもしれない。とっさにどうしてここまで放っておいたのか?という疑問が頭をよぎったが……。

    患者の話によると、2年前に地元の肛門科を受診しており、その時は切れ痔の診断を受けて治療したそうだ。その後痛みが出たが、切れ痔だと思って通販で買った軟膏を使用していたという。痔の患者にはよくある処置である。しかし2カ月前から急に大きくなったので心配になって片道2時間かけて来院した。地元で男性医師の診察を受けたが、やはり女性の先生に診てもらってALTA(注射療法)で痔を治したいというその時の老婦人の表情は、明るくて希望に満ちたものだった。

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